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2021/06/06

大和本草諸品圖下 筋魚・ウミゴ・江戶魚・ハラヲ (タカノハダ・アイゴ・オキエソ・フウライカジキ)

大和本草諸品圖下 筋魚・ウミゴ・江戶魚・ハラヲ (タカノハダ・アイゴ・オキエソ・フウライカジキ)

 

2

 

是亦 筋魚 ト云

 海魚也長不ㇾ過數寸

 與ㇾ上

 其文條

 縱橫不

 ㇾ同可ㇾ食

○やぶちゃんの書き下し文

是〔れも〕亦、「筋魚」と云ふ。海魚なり。長さ、數寸〔(すすん)〕に過ぎず。上に在る者と、其の文條〔(もんでう)〕、縱橫同じからず。食ふべし。

――――――――――――――――――

ウミゴ

 在ㇾ海ニ大サ不

 ㇾ過數寸ニ

○やぶちゃんの書き下し文

うみご

海に在り。大〔(おほい)〕さ、數寸に過ぎず。

――――――――――――――――――

江戶魚

 海魚ナリ大者

 不ㇾ過五六寸

 味佳目口

 與他魚

 如ㇾ所ㇾ圖

○やぶちゃんの書き下し文

江戶魚

海魚なり。大者、五、六寸に過ぎず。味、佳し。目・口、他魚と異〔(ことなる)〕こと、圖〔する〕所のごとし。

――――――――――――――――――

バウヲ

 長六尺ヨリ至

 一丈形狀

 ブリノ如

 味平淡

 七八月

 捕ㇾ之

 爲海魚

 對馬洲

 多

○やぶちゃんの書き下し文

ばうを

長さ、六尺より一丈に至る。形狀、「ぶり」のごとし。味、平淡。七、八月に之れを捕る。海魚と爲す。對馬洲に多し。

[やぶちゃん注:図は国立国会図書館デジタルコレクションの画像をトリミングした。

「筋魚」は特徴的な斜めになった縦縞模様から、

スズキ目スズキ亜目タカノハダイ科タカノハダイ(鷹の羽鯛)属タカノハダイ Goniistius zonatus

とみてよかろう。尾鰭に特徴的な白点紋が描かれていないのは、絵師が力不足で描けなかったからか(このレベルではそもそもが小さな白斑は描きようがあるまい)、或いは幼魚だからかも知れない。「大和本草卷之十三 魚之下 きこり魚 (タカノハダイ)」を参照。そこにリンクさせた栗本丹洲の図などと比較されたい。

「うみご」は、ちょっと体幹がぼよんと棒のように描かれているが(この絵師の悪い癖でもあるように思われる。解説文を添えるために縦方向の現物のサイズを縮小して、しかも枠内に小さくなく収めるという非博物図的な操作が疑われる)、名前の近似性からは、

スズキ目ニザダイ亜目アイゴ科アイゴ属アイゴ Siganus fuscescens

であろうか。「大和本草卷之十三 魚之下 鯘(あいのうを) (アイゴ)」を参照。但し、有毒で危険な太い棘条を有する背鰭・腹鰭・臀鰭を孰れも刈り込んだように短く描いており、アイゴとすれば、完全な博物画失格である。

「江戶魚」これはもう、面つきの飛び抜けた異形さと、体表の派手さから、

ヒメ目エソ科オキエソ属オキエソ Trachinocephalus myops

としてよいと思う。エソ科 Synodontidae のエソ類或いは種としてのエソについては、「大和本草卷之十三 魚之下 ゑそ (エソ或いはエソ類)」を見られたい。キス釣りの外道として釣り人には面構えが醜いので忌み嫌われる。

「はうを」魚体が有意にスマートであること、吻が有意に突き出ていることから、

スズキ目カジキ亜目 Xiphioidei のカジキ(梶木)類

かと思われるが、であれば、大きく描かれるはずの背鰭がまたしても刈り込まれた五分刈りみたようでショボく、なにより吻部の上下顎に細かな歯が描かれているのも悩ましい。「ハウオ」現在、カジキ亜目マカジキ科バショウカジキ(芭蕉梶木)属バショウカジキ Istiophorus platypterus の異名である(背鰭の巨大さから「葉魚」か)。しかし、バショウカジキを描くなら、小学生でもこんな描き方はしない(が……この絵師ならやりかねないし、特に話だけで実物を見ずに描いていたとなら……)と、好意的に解釈すると、私は、カジキ類の中でも、有意に体がスマートで小さく、吻も短いという外見からは、

マカジキ科フウライカジキ属フウライカジキ Tetrapturus angustirostris

が最も近いように思われる。当該ウィキを引いておく。『インド太平洋暖海域に分布する小型・外洋性のカジキである。日本での地方名としてスギヤマ(東京)などがある』。『成魚は全長』二メートル『ほど。カジキ類としては吻が短く、英名"Shortbill spearfish"(短い嘴のカジキ)はここに由来する。体は前後に細長く、体高は低い。胸鰭は腹鰭より短い。第一背鰭は基底が前後に長くて広いが、バショウカジキほど長大ではない。小型で吻が短く細長い外見から、他のカジキ類とは区別し易い』。『インド太平洋の熱帯・亜熱帯域に広く分布し、稀に喜望峰を回り』、『大西洋へ抜ける個体もいる。日本では本州中部以南の暖流に面した海域に出現する。外洋表層を回遊し、日本近海産カジキ類の中ではクロカジキと並んで外洋性が強い。産卵期は冬で、水温』摂氏二十五度『前後の暖海域で産卵する』。『本種を特に狙う漁業はなく、マグロ延縄や曳縄(トローリング)で混獲される。日本産カジキ類では最も不味いとされ、他のカジキ類と比べて漁業価値は低いが、魚肉練り製品の原料として利用されることがある』とある。因みに、図には「対馬に多い」と解説にあるが、対馬では対馬海流のお蔭で(暖海性のカジキ類は日本海では少ない)、カジキ亜目マカジキ科マカジキ属マカジキ Kajikia audax が採れる。]

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