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2021/07/14

日本山海名産図会 第二巻 芝菌品(たけのしな)(=茸蕈(きんじん)類=きのこ類)

 

芝菌品(たけのしな)

地に生(お)ふるを「菌(きん)」、また、「蕈(じん)」といふ。木に生ふるを「䓴(せん)」と云ふ。菌は「和名鈔」『タケ』、「䓴」を『キノミヽ』と訓(よ)めり。菌に數種あり、「木菌(もくきん)」【「キクラゲ」の類。】・「士菌(ときん)」【つちより生ずる類。】・「石菌(せききん)」【「イハタケ」の類。】等(とう)にして、品數(ひんすう)、甚だ多し。是れ、宋人(そうひと)陳仁玉(ちんんしんぎよく)、「菌譜」を著はして、甚だ詳(つまびら)かなり。「本草」に云、『凡そ、菌(きん)、六、七月の間(あいた)、濕熱(しつねつ)蒸(む)して山中(さんちう)に生ずる者、甘く滑らかにして食ふへし』云々。しかれども、「菌譜」・「本草」に載するもの、本朝に在る所、多くは同しからずして、悉くは、辨じがたし。○是れを俗に「クサビラ」とはいへども、「和名抄」にては、菜蔬(さいそ)を『クサビラ』といへり。中國及び九刕の方言には『なは』といふ。尾張邉(へん)には『みゝ』と云う。

[やぶちゃん注:所謂、「きのこ」(茸・菌・蕈)である。ウィキの「キノコ」によれば、「きのこ」とは『特定の菌類のうちで、比較的大型の(しばしば突起した)子実体』或いは『担子器果そのものをいう俗称であ』り、『また』、『しばしば』「きのこ」『という言葉は特定の菌類の総称として扱われるが、本来は上述の通り』、人為的分類に於けるある一群の『構造物』に対して名付けられたものでしかなく、『菌類の』生物学的な『分類のことではない』。『子実体を作らない菌類は』、所謂、「黴(かび)」である。「きのこ」類は『植物とは明確に異なる』ものである。『ここで』言うところの『「大型」に』は『明確な基準はないが、肉眼で確認できる程度の大きさのものを』「きのこ」と『いう場合が多い。食用、精神作用用にもされるが』、『毒性を持つ種もある。語源的には』、「木」+「の」+「子」」で『目に見える大きさになる子実体を持つ菌は、担子菌門 Basidiomycota か』、『子嚢菌門 Ascomycota に属するものが多い』。『日本では約』三百『種が食用にされ』、その内、『十数種が人為的にキノコ栽培されている』。『日本では既知の約』二千五百『種と』、その二~三『倍程度の未知種があるとされ、その中でも、『よく知られた毒』きのこは約二百種に上り、その内の二十種ほどが『中毒者が多かったり』、『死に至る猛毒がある』とある。

「䓴(せん)」は後に出る通り、中国でも「木耳」の意とする。而してこれは日中に於いて、種としての菌界担子菌門真正担子菌綱キクラゲ目キクラゲ科キクラゲ属キクラゲ Auricularia auricula-judae に当てられている。当該ウィキによれば、『学名の内、属名はラテン語の「耳介」に由来する。種小名は「ユダの耳」を意味し、ユダが首を吊ったニワトコの木からこのキノコが生えたという伝承に基づく。英語でも同様に「ユダヤ人の耳」を意味するJew's earという。この伝承も』あることから、『ヨーロッパではあまり食用に』されていない、とある。この種小名は差別的で、私はシノニムとして残しつつ、変更すべきものと考えている。

「和名鈔」源順の「和名類聚抄」。「抄」は「鈔」とも表記する。巻十七の「菜蔬部第二十七」の「野菜類第二百二十九」に、

   *

菌(タケ)【「䓴(キノミヽ)」。附(つけたり)。】 「爾雅注」に云はく、『菌【音「窘(キン)」。具(つぶさ)に「菜羹類」[やぶちゃん注:野菜の羹(あつもの)類。]に見たり。】は形、盖(ふた)に似たる者なり。』と。「四聲字苑」に云はく、『䓴【音「軟」。和名「木乃美々」。】は、木耳。卽、木菌(きのたけ)なり。狀(かたち)、人の耳に似て、黑色。』と。

   *

「イハタケ」現行の狭義の種としては、「岩茸」「石茸」として、深山の岩壁に着生するくしゃくしゃした薄い皮革状の地衣類の一種(東アジアの温帯に分布し、中国・朝鮮・日本では山菜及び生薬として利用するところの、子嚢菌門チャシブゴケ菌綱チャシブゴケ目イワタケ科イワタケ属イワタケ Umbilicaria esculenta があり、概ね、ここでも、この類をイメージしてよかろう。当該ウィキによれば、径り数センチメートルから十センチメートルほどの偏平な葉状地衣類で、最大三十センチメートルになる。『上面は灰色、下面は黒くとげ状の毛が密生する。裏面の中央部にサンゴ状に枝分かれした突起があり、ここで岩に固着する。革状で、乾燥すると』脆い。『東アジアの温帯の日当たりがよい岩壁に分布する。中国では江西省、安徽省、浙江省が主産地で、廬山、黄山、九華山などの観光地として知られる山で、特産品として扱われている。特に廬山では』、「石魚」(スズキ目ハゼ亜目ハゼ科ゴビオネルス亜科 Gobionellinae ヨシノボリ属ゴクラクハゼ Ctenogobius giurinus 。本邦にも秋田県及び茨城県以南の本州・四国・九州・南西諸島の汽水・淡水域に棲息)・「石鶏」(両生綱無尾目カエル亜目アカガエル上科ヌマガエル科ヌマガエル亜科 Quasipaa 属オオトゲガエル(スピノーザトゲガエル)Quasipaa spinosa とともに、『「三石」と称され、名産品となっている。雪などの影響がなければ』、『年中採取できるが、断崖絶壁等の採取が困難な場所に生育するため』、『採取には多大な労力を要する』。『成長が』一『年でわずか』一ミリメートル『程度と非常に遅いため』一キログラムで一『万円以上の値がつくほど』、『高価である。中国では、江西料理や安徽料理で、炒め物、煮物、シロップ煮などに使われる。日本では、ゆでて酢の物などにして食べることが多い。味は余りないので、調味料でしっかり味をつけるのが普通である。長野県北相木』(きたあいき)『村には、味付けしたイワタケを餡にした「岩茸まんじゅう」というものがある』。『乾物として流通しているので、まず』、『塩を少し加えたぬるま湯に付けて戻し、もみ洗いして細かい砂を洗い落とす。裏側の毛があると食感が悪いので、こすり落とす』。『中国では生薬としても利用される例があ』り、元の呉瑞が編纂した「日用本草」(一三二九年刊)では『「性寒、味甘、無毒」とし、「清心、養胃、止血」の効能があるとしている。慢性気管炎に有効との報告もある。成分として』、地衣類に多く見られる安息香酸の一種『ギロホール酸』(Gyrophoric acid)・『レカノール酸』(Lecanoric acid)『を含む事が知られている』。『広重の浮世絵にあるように』(リンク先に有り)、『その採取は古来より大変危険なものであり、しばしば転落事故などで命を落とすものも多かった。大分県には』「吉作(きっさく)落とし」と『呼ばれる悲劇的な民話が残っている』とある。最後の「吉作落とし」は「ピクシブ百科事典」のこちらに詳しい。私も「まんが日本昔ばなし」のそれを見て、印象深い。

『宋人(そうひと)陳仁玉(ちんんしんぎよく)、「菌譜」』南宋の官吏で学者であった陳仁玉(一二一二年~?)の撰で一二四五年に成立。「中國哲學書電子化計劃」のこちらで「欽定四庫全書」版影印で読める。維基文庫版の電子化と合わせて見るとよかろう。

『「本草」に云、『凡そ、菌(きん)、六、七月の間(あいた)、濕熱(しつねつ)蒸(む)して山中(さんちう)に生ずる者、甘く滑らかにして食ふへし』「本草綱目」では巻二十八の「菜之五」の「芝栭(しじ)類」(「芝」は霊芝などに代表される「きのこ」、「栭」はキクラゲ類を指す)には本見出しで十五種(その中にさらに四種を附している)を立項する。芝・木耳・杉菌・皁角蕈・香蕈・葛花菜・天花蕈・蘑菰蕈・雞㙡・舵菜・鬼葢・竹蓐・雚菌・地耳・石耳である。但し、「菌」の「集解」には『「抱朴子」に云はく、「芝は石芝・木芝・肉芝・菌芝、有り。凡そ數百種なり」』と記してある。但し、作者の引用は不全で、完全な同一文字列を見出せない。思うに「香蕈」(担子菌門菌蕈綱ハラタケ目キシメジ科(或いはヒラタケ科・ホウライタケ科・ツキヨタケ科)シイタケ属シイタケ Lentinula edodes )の「集解」辺りを恣意的にいじくったもののように思われる。

「クサビラ」小学館「日本大百科全書」によれば、『食用となる草の古称。「草枚」「草片」の義という。野菜、山菜のすべてにいい、「あおもの」というのも同じとみてよい。また』、『キノコ類のうち、木に直接寄生しないマツタケ、シメジ、ショウロ、ハツタケなどをいい、木に寄生するシイタケ、エノキタケを「木の子」といって区別した。なお、伊勢』『の斎宮(さいぐう)の忌みことばでは宍(しし)(獣の肉)をさし、盗人仲間の隠語では、その形が似ているところから菅笠(すげがさ)をいう』とある。

『「和名抄」にては、菜蔬(さいそ)を『クサビラ』といへり』「和名類聚抄」巻十七の「菜蔬部第二十七・葷菜類第二百二十五」に、

   *

葷菜 「唐韻」に云はく、『葷【音「軍(くん)」。今、案ずるに、大小の蒜(ひる)の總名なり。】は「臭菜」なり。』と。「兼名苑注」に云はく、『草に間(まぢ)へ食ふ。「菜蔬」と曰ふ【「在」「疎」二音。和名、「菜蔬」・「久佐非良」。】。』と。

   *

とある。

「中國及び九刕の方言には『なは』といふ」小学館「日本国語大辞典」では、「なば」で見出しとし、『「きのこ(茸)」の異名』としつつ、「方言」の条で、『きのこの笠』(島根県)・『きくらげ』(福岡県)・『まつたけ(松茸)』(奈良県・広島県)とし、次に『きのこ類の総称』として中国及び九州として多くの採集地を掲げてある。「語源説」には『クサヒラの反カハの転、あるいはナカヒラ(中平)の反〔名語記〕』及び『滑生の義〔大言海〕』とある。

「尾張邉(へん)には『みゝ』と云う」小学館「日本国語大辞典」では、「耳」の最後に「方言」として『きのこ(茸)』と掲げるが、最終地は佐渡・石川県珠洲郡・但馬である。ウィキの「ハツタケ」(担子菌門ハラタケ亜門ハラタケ綱ベニタケ目ベニタケ科チチタケ属ハツタケ Lactarius hatsudake )によれば、『北陸地方(富山県・石川県など)では「まつみみ(なまって「まつみん」・「まつめん」とも)」と呼ぶ地域がある』とある。但し、私の妻は私より一つ年上で生粋の名古屋人であるが、「きのこ」を「みみ」と呼ぶことはないとはっきり明言した。]

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