曲亭馬琴「兎園小説」(正編) 元文五年の曆のはし書 文寶堂
○元文五年の曆のはし書
世俗、「一晝夜」と云ふは、明け六時を一日の初とし、次の明六時迄を終とす。月食をしるすことも、俗間にしたがひ、右之通、用ひ來れり。然れ共、元より、子・丑・寅・卯の四時は、次の日の處分なる故に、今より後、此四時には、翌の字を附けて、是を知らしむ。幷に、二十四節・土用も、皆、右の如し。自今已後、此例にしたがふなり。重ねて斷ずるにおよばず。
澁川 六藏源則休
謹誌
猪飼豐次郞源又一
此古曆は、元飯田町釘屋權兵衞所持す。
右三ケ條
乙酉二月初八 文 寶 堂
[やぶちゃん注:「元文五年」一七四〇年。
「明け六時」(あけむつ)は定時法では午前六時頃であるが、江戸時代によく用いられた不定時法では、夏至で午前四時、春分・秋分の頃で五時半、冬至で六時半である。
「子・丑・寅・卯」午後十一時頃から翌日の午前七時頃まで。]
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