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2021/08/14

曲亭馬琴「兎園小説」(正編) 銀河織女に似たる事 文寶堂

 

   ○銀河織女に似たる事

南亞米利加のうちに、「アマソウネン」といふ所あり。此所の山に女ばかりすみて、一年に一度河を渡りて男に逢ふといふ。その河の名を蠻語にては、「リヨデラタラタ」といひ、紅毛語にては、「シリフルリヒール」といふ。「シルフル」は「銀」なり。「リヒール」は「河」なり。もろこし人のいひ傳へし銀河織女の事などは、かゝる事を聞き傳へたるにや。その山の邊に、男つねにかよへば、竹鎗にて、ふせぎて、入れず、といふなれば、「阿蘭陀通事、今村金兵衞、話なり。」と、蜀山翁、申されき。【解、按、「坤輿圖說」、「韃而靼・附錄」、「亞瑪作搦」條下曰、『迤西舊有女國。曰亞瑪作搦。最饒勇善戰甞破名郡一國俗惟春月容男子。一至其地。生ㇾ子。男輙殺也。今又爲他國所ㇾ倂。今村生所ㇾ話、亞瑪作搦女國事、蓋據ㇾ之也。著作堂追記。】[やぶちゃん注:頭書。「解」は馬琴の本名。]

 

[やぶちゃん注:前の前で本電子化冒頭に述べた掟を破って。えらい時間をかけて注を施してしまったので、この馬琴の頭書もスルーしようと思ったが、幸いにしてchinjuh 氏のブログ「ネタ袋」の「兎園小説より抜き書き」で、かなり詳しい注を附しておられるのを見出したので(多言語にお詳しい方である)、引用させて戴く。

   《引用開始》

# アマソウネン…オランダ語でアマゾンのことか。

# リヨゲラタラタ… スペイン語の Rio de la Plata リオデラプラタが訛ったものか。

# シリフルリヒール… ロシア語で銀は серебро シリブロ、川は река リカーである。

# ■…漢字が出ない! しんにょう+施の旁の部分[やぶちゃん注:「迤」。「迤西」は雲南省の旧称であるが、そこを指しているかどうかは判らない。「迤西」には広義の「西洋」の意味もあるからである。ただ、以下の記者の注からすれば、「迤西」は一般名詞で広義の中国の西の方でタタールと一致する。]

# 亜瑪作搦…北京語読みでは Yà mǎ zuò nuò であるからアマゾンの音写であろう。

# 漢文の"極めて"おおざっぱな意味は、「『坤輿図』の韃而靼(タタール?)の附録、アマゾンの条に、女国がある、勇ましい男子がその地におもむいて子を作るが、男は殺されてしまう、今では他の国の一部になっている、とある。本文の元ネタはこれなんじゃないの?著作堂(馬琴のこと)追記。」という感じ??ギリシア神話のアマゾーン(アマゾネス)は黒海沿岸の部族だったと言われているので、『坤輿図』に書いてあるというのもアメリカ大陸のアマゾン川のことではないかもしれない。そういえば韃而靼(タタール)って書いてあるし。

# アマゾン川でとれる微斜長石の一種を天河石(アマゾナイト)というが、天河は銀河のことでもあるのでイメージの連鎖が面白い。天河という訳語が日本で作られたものならばアマゾンのアマを天で音写したものと考えられるが、尼でも雨でもなく天を使うのは、アマゾネスの伝説を織女と重ね合わせたからではないかとも想像できる。いや、単なる偶然のような気もするが。天河という言葉のルーツもさぐりたくなってくる。

   《引用終了》

この注、甚だ面白い。感謝する。]

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