「萩原朔太郎詩集 Ⅴ 遺稿詩集」(小学館版)「第一(「愛憐詩篇」時代)」 (無題)(永日のかなしみせきがたく)
○
永日のかなしみせきがたく
ひとり靑竹をきりて
笹をつくる
ひねもすわが側に來り
しきりに芽をのぶる幼樹あり
さて岸邊にはまた舟夫を呼べるあり
そこはかと土くづるる音し
石垣のかげに人足(ひとあし)の行きかふけはひもす
うちみればはるかなる赤土の丘にしも
われひとり坐り居て
しきりにさびたる鉈をふるふなりけり
いともしづかなる日の下に
わが哀想は靑竹の笹をつくりあぐ
ひねもすわが側に來り
幼樹はしきりにその芽をのぶ
[やぶちゃん注:底本では制作年は未詳(記載なし)で、出典を『ノオト』とする。筑摩版全集では、「原稿散逸詩篇」にあるが、それは本底本に先行する小学館版「萩原朔太郎全集遺稿上」から転載されたもので、既に原稿は失われているようである。]
« 「萩原朔太郎詩集 Ⅴ 遺稿詩集」(小学館版)「第一(「愛憐詩篇」時代)」 小春 | トップページ | 「萩原朔太郎詩集 Ⅴ 遺稿詩集」(小学館版)「第一(「愛憐詩篇」時代)」 (無題)(しづかにのびよ) »