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2021/10/20

「萩原朔太郎詩集 Ⅴ 遺稿詩集」(小学館版)「第三(『月に吠える』時代)」 墓參 /詩集「蝶を夢む」の「輝やける手」の初出形

 

  墓   參

 

おくつきの砂より

けちえんの手くびは光る

かがやく白きらうまちずむの屍蠟の手

指くされども

らうらんと光り哀しむ。

 

ああ 故鄕(ふるさと)にあればいのち靑ざめ

手にも秋くさの香華おとろへ

靑らみ肢體に螢を點じ

ひねもす墓石にいたみ感ず。

 

みよ おくつきに銀のてぶくろ

かがやき指はひらかれ

石英の腐りたる

我れが烈しき感傷に

けちえんの らうまちずむの手は光る。

 

[やぶちゃん注:太字は底本では傍点「ヽ」。なお、最終行の「らうまちずむ」には傍点はない。「らうまちずむ」は自己免疫疾患の一つで機序がよく判っていないリウマチ(rheumatism:英語のカタカナ音写は「リュマティズム」が近い)のこと。関節・骨・筋肉の強張り・腫 れ・痛み・変形などの症状を呈する疾患の総称。古代には「悪い液が身体各部を流れていって起こる」と考えられ、名は「流れる」の意のギリシャ語に由来するほどに古い。現在は主に「慢性関節リウマチ」を指す。「リューマチ」「ロイマチス」とも表記する。底本では、大正三(一九一四)年八月二十日の作とし、翌大正四年一月の『異端』初出とする。筑摩版全集でも、当該雑誌の同年一月号とする。初出を示す。歴史的仮名遣の誤り・誤字はママ。

 

 墓參

 

おくつきの砂より、

けちゑんの手くびは光る、

かゞやく白きらうまちずむの屍臘の手、

指くされども、

らうらんと光り哀しむ。

 

ああ故鄕(ふるさと)にあればいのち靑ざめ、

手にも秋くさの香華(かうげ)おとろへ、

靑らみ肢體に螢を點じ、

ひねもす墓石にいたみ感ず。

 

みよ、おくつきに銀のてぶくろ、

かゞやき指はひらかれ、

石英の腐りたる、

われが烈しき感傷に、

けちゑんの、らうまちずむの手は光る。

           ――一九一四、八、二〇――

 

さて、この詩篇は、後の萩原朔太郎の第三詩集「蝶を夢む」(大正一二(一九二三)年七月十四日新潮社刊)に、「輝やける手」と改題して、以下のように載る。ルビは一切ない。

 

 輝やける手

 

おくつきの砂より

けちゑんの手くびは光る

かゞやく白きらうまちずむの屍蠟の手

指くされども

らうらんと光り哀しむ。

 

ああ故鄕にあればいのち靑ざめ

手にも秋くさの香華おとろへ

靑らみ肢體に螢を點じ

ひねもす墓石にいたみ感ず。

 

みよ おくつきに銀のてぶくろ

かゞやき指はひらかれ

石英の腐りたる

われが烈しき感傷に

けちゑんの、らうまちずむの手は光る。

 

やはり最終行の「らうまちずむ」に傍点はない。]

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