「萩原朔太郎詩集 Ⅴ 遺稿詩集」(小学館版)「第一(「愛憐詩篇」時代)」 砂金
砂 金
くもり日のうちしめれる渚をつたひ
ひとりしくしくと步みしが
つかれてまた砂丘に倒れ伏し
さびしく掌に砂をすべらしむ
さびしきたはむれはけふも掌に砂をすべらし
ねむれる渚に鷗をおどろかしむ
われは砂より生れ砂よりいでて
光りをみがく砂金なり
みよ かすかに指のあひだにうごめき
くすぐるごとく踊れるものあり
砂金は砂の中より
かなしき聖歌を唄へるなり
主よ
主はめぐみにみてり。
[やぶちゃん注:底本では制作年は未詳(記載なし)で、出典を『ノオト』とする。筑摩版全集では、「原稿散逸詩篇」にあるが、それは本底本に先行する小学館版「萩原朔太郎全集遺稿上」から転載されたもので、既に原稿は失われているようである。]
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