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2021/10/20

「萩原朔太郎詩集 Ⅴ 遺稿詩集」(小学館版)「第三(『月に吠える』時代)」 空中樓閣 (附・同草稿及び未発表詩篇「月光」)

 

  空 中 樓 閣

 

みそらに都會あり

靑は衣裝

紅は音樂

黃は聖母

菫は榮光

 

みよ魚鳥遠(とほ)きに商(あきな)はれ

ふんすゐをせきめぐるの小路

往來風ながれ

紙(かみ)製の果物ぞならぶ

 

ああしばし

わが念願は鈴をふり

遊樂はみどりなす出窓にいこふ

 

音もなきみ空の都會

しめやかに みなみへながれ行方を知らず

はれるや。

 

[やぶちゃん注:底本では制作年を大正三(一九一四)年八月とし、『遺稿』とする。筑摩版全集では、「未發表詩篇」にある。以下に示す。

 

 空中樓閣

 

みそらに都會あり、

靑は衣裝、

紅は音樂、

黃は聖母、

菫は榮光、

 

みよ魚鳥遠(とほ)きに商(あきな)はれ、

ふんすゐをせきめぐるの小路、

往來風ながれ、

紙(かみ)製の果物ぞならぶ、

 

ああしばし、

わが念願は鈴をふり、

遊樂はみどりなす出窓にいこふ、

 

音もなきみ空の都會、

しめやかにみなみへながれ行方を知らず、

はれるや。

 

とある。同一の原稿と考えてよかろう。

 なお、同全集の『草稿詩篇「未發表詩篇」』には、以下の二種の草稿(標題は孰れも「虹」)が示されてある。脱字や歴史的仮名遣の誤りは総てママ。

   *

 

  

 

さびしけれども

みそらに都會にあり[やぶちゃん注:編者は「にあり」を『あり』の誤りとする。]

影は女ひとの影 往來に喇叭ふき

紅は衣裝は音樂

靑は音樂

いろは聖母

みどりは運河→軽舸→でん→魚鳥  巡禮

 

往來に風ながれ

紙製の果實はならぶ

 

 

  

 

みそらに都會り[やぶちゃん注:編者は「り」は『あり』の脱字とする。]

靑は衣装

茶は音樂

黄は聖母

綠は巡禮

みよきに魚鳥商はれ

ふんすゐをせきめぐるの小路

女は晶玉

往來八月風ながれ

紙製の果物はならぶ

みよ女は 一連の つらなる晶玉

さびしくしてはしやげる

せはしなき かげ 影のいとなみ

┃み空に都會あり

みよ はやせわしなき影のいとなみ

┃はやわれの戀情に遠 力の力の出窓に立てり

うれひに しづむ→しづめる ぬるるみ空の都

ああ 往來音もなきみ空の都會ありうれひのかげのゆきかひ

さびしけれども

夕風に消ゆる

時計は壁につめたく

┃戀情は、遠き出窓にきゆ夢と消ゆ

[やぶちゃん注:最後の「┃」は私が引いた。以上の十行がソリッドなものとして並列されていることを示す。]

 

   *

編者注があり、『右の兩草稿は、未發表詩篇「月光」と同一用紙に書かれている。』とある。序でに、同全集から、それを引く。

   *

 

 月光

 

峯々の谷は金銀

みほとけの頭金銀

月光

水ながれしより

月に河鹿けぶる

 

   *

編者注があり、『12の數字は作者が附したもの。』とある。]

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