「萩原朔太郎詩集 Ⅴ 遺稿詩集」(小学館版)「第一(「愛憐詩篇」時代)」 ふぶき
ふぶき
くち惜しきふるまひしたる朝
ああらんらんと降りしきる雪を犯して
一目散にひたばしる
このとき雨もそひきたり
すべてはくやしきそら涙
あの顏にちらりと落ちたそら涙
けんめいになりて走れよ
ひたばしるきちがひの涙にぬれて。
ああらんらんと吹きつけり
なんのふぶきぞ靑き雨ぞや。
[やぶちゃん注:「犯して」「涙」は底本のママ。初出は大正二(一九一三)年十月号『創作』。初出形を筑摩版全集で示す。
ふゞき
くち惜しきふるまひしたる朝
あらゝらんらんと降りしきる雪を犯して
一目散にひたぱしる
このとき雨もそひきたり
すべてはくやしきそら淚
あの顏にちらりと落ちたそら淚
けんめいになりて走れよ
ひたばしるきちがひの淚にぬれて。
あらゝんらんと吹きつけり
なんのふゞきぞ靑き雨ぞや
三行目の「ひたぱしる」の「ぱ」はママ。雑誌の誤植であろう。筑摩書房全集では、『「習作集第八卷」の「ふぶき」』『參照』とある。以下にその「ふぶき」を示す。太字は底本では傍点「ヽ」。
ふゞき
くち惜しきふるまひしたるあさ
あらゝん、らんと降りしきる雪を犯して
一目散にひたばしる
このとき雨もそひきたり
すべてはくやしきそら淚
あの顏にちらりと落ちたそら淚
けんめいになりて走れよ
ひたばしるきちがひの淚にぬれて
あらゝんらんと吹きつける
なんの吹雪ぞ靑き雨ぞや。
編者注で『題名の下にS.Sと記されている』とある。また、「犯して」は後の投げ込みで「冒して」に訂正強制変更が指示されてある。]
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