「萩原朔太郎詩集 Ⅴ 遺稿詩集」(小学館版)「第二(淨罪詩篇)」 祈禱
第二(淨罪詩篇)
祈 禱
あなたのめぐみをもて雪をふらしてください
あなたのふしぎをもて牢獄(ひとや)の窓をあけてください
あなたのおほみこころのみまへに
わたくしの懺悔(ざんげ)をささげまつる。 亞眠(ああめん)。
[やぶちゃん注:「亞眠(ああめん)」の前は句点がしっかり一字分で組まれており、見た感じも「空いてるな」と感じさせるように確かに認識出来る。しかし、ブラウザではその感じを出すには、半角を添えてもだめだったので、句点の後に新たに全角一字分の空きを加えるしかなかった。しかし、これが見かけ上、最も近い。さて、底本では『遺稿』とし、推定で大正三(一九一四)年とするが、筑摩版全集の「拾遺詩篇」に、大正四年六月発行の『街上』を初出とするものが、詩篇本文はほぼ相同である。初出形は、
祈禱
あなたのめぐみをもて雪をふらしてください、
あなたのふしぎをもて牢獄(ひとや)の窓をあけてください、
あなたのおほみこころのみまへに、
わたくしの懺悔(ざんげ)をささげまつる。 亞眠(あーめん)。
―淨罪詩篇―
である。「亞眠(あーめん)」の前は筑摩版全集でも同じ感じで配されてあるので、同じ処理を施した。
なお、筑摩版全集の『草稿詩篇「拾遺詩篇」には、以下の本篇の草稿(無題で二種)がある。
*
○
あなたのめぐみをもて雪をふらしてください
あなたのめぐふし
○
あなたのめぐみをもて雪をふらしてください
あなたのふしぎをもて牢獄の窓をあけてください
あなたのみおほみこころのまにまにみまへに
わたくしのげさんげをさゝげまつる、主よ。
*
最後に編者注があり、『本稿は「拾遺詩篇」の「たびよりかへれる巡禮のうた」草稿と同一用紙の前半に書かれている。』とある。「たびよりかへれる巡禮のうた」はこちら。]
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