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2021/10/11

「萩原朔太郎詩集 Ⅴ 遺稿詩集」(小学館版)「第一(「愛憐詩篇」時代)」 (無題)(こほれる利根のみなかみに) 「冬を待つひと」の草稿の一つ

 

  

 

こほれる利根のみなかみに

ひねもす銀の針をたれ

しづかに水に針をたれ

さしぐみきたる冬をまつ

ああその空のうすぐもり

かみつけの山に雪くれば

ひそかに魚は針をのみ

涙は芝をうるほしぬ。

ひとり岸邊に針をたれ

さしぐみきたる冬をまつ。

 

[やぶちゃん注:底本の「詩作品年譜」では、『遺稿』とし、制作年を推定で大正三(一九一四)年とする。さて、これは筑摩版全集を調べて見ると、酷似した(相同ではない)詩篇が「冬をまつひと」の題で、大正四年一月号『遍路』に以下のように出ることが判った。

 

  冬を待つひと

 

こほれる利根のみなかみに、

ひねもす銀の針を垂れ、

しづかに水に針を垂れ、

さしぐみきたる冬を待つ。

ああ、その空さへもうすくもり、

かみつけの山に雪くれば、

魚らひそかに針をのみ、

ま芝は霜にいろづけど、

ひとり岸邊に針を垂れ、

來らむとする冬を待つ。

 

また、この初期形が「習作集第九巻」に、

 

  冬を待つひと

 

こほれる利根のみなかみに

ひねもす銀の針を垂れ

しづかに水に針を垂れ

さしぐみきたる冬をまつ

ああその空もうすぐもり

かみつけの山に雪くれば

ひとり魚らひそかに針をのみ

ま芝は霜にいろづけど

ひとり岸邊に針をたれ

きたらんとする冬をまつ、

 

の形で出、さらに、筑摩版全集第三巻の『草稿詩篇「拾遺詩篇」』の中に「冬を待つひと (本篇原稿二種二枚)」とある後半の二種目に(「→」は書き換えを示す)、

 

  ○

こほれる利根のみなかみに

ひねもす銀の針をたれ

しづかに水に針をたれ

さしぐみきたる冬をまつ

ふるさとのああその空さへものうすぐもり

遠山なみにかみつけの山に雲[やぶちゃん注:ママ。]ふれば→ふりづれば[やぶちゃん注:ママ。]くれば

ひそかに魚は針をの

こほれる利根の水上に。

われは淚をもよほしぬ

淚は草→柴芝をうるほしぬ。

ひとりしづかに岸べに針をたれ

さしぐみきたる冬をまつ、

 

があった。本篇はこの最後のそれを整序したものと推定出来る。

 なお、この草稿の前にある本篇の別草稿は、中間部の残存並置が異様に多く、電子化が難しい。そこで、その中間部のみを筑摩版全集から画像として取り入れ、上下二段で切れいていることから、合成した画像で示した。これは引用のレベルで許されるものと判断する。そこで使用されている記号を全集の同パートに「凡例」を参考に注しておくと、{ }はともに抹消されずに残った箇所を示し、〈 〉は抹消字を指し、《 》は〈 〉内の抹消に先立って推敲抹消された箇所を示す(「先立って」というのは、そのように推定されるとすべきであると私は考えている)。なお、上部にある横線であるが、これは、『數行つづきの詩行が對應し、ともに抹消されていない場合は、對應する』(ここも、そのように推定されるとすべきところであろう)『詩行の上部にそれぞれ橫線を引き、それぞれ{ }でくくった。』とある。前後は私が電子化し、今まで通り、抹消部は抹消線で示した。なお、題名は「菊」である。最終行の「泳けり」はママ。

   *

 

 菊

 

遠鳴る海の音にさへ

うす雪のさしぐむものを

こほれる利根のみなかみに

ひねもす銀の針をたれ

しづかに水に針をたれ

うれひにわがふるさとの[やぶちゃん注:以下、行空けなしで画像の最初(右)に続く。]

Huyuwomatuhitokikububunntyuukanbugousei

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

きみを思へば[やぶちゃん注:画像の最終行に行空けなしで続く。]

うすゆきの空のさしぐむものを、

靑き松葉に霜はかゝれり、

さやさやと魚すいすいと小魚(いさな)泳けり

 

   *]

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