「萩原朔太郎詩集 Ⅴ 遺稿詩集」(小学館版)「第三(『月に吠える』時代)」 顏
顏
淺草公園活動寫眞のくらやみに
耳なき白き犬は殺されたり
慘酷にも殺されたり
殺されたる白き犬の幽靈
プラチナの映畫は繰返せり。
―東京遊行詩篇五―
編註 「東京遊行詩篇」の二「狼」、三「かなしい遠景」は既刊詩集に收錄。
[やぶちゃん注:底本では大正三(一九一四)年十月の作とし、『遺稿』とある。筑摩版全集では、「未發表詩篇」に以下のように出る。誤字「扁」はママ。
顏
淺草公園活動寫眞のくらやみに、
耳なき白き犬は殺されたり、
慘酷にも殺されたり、しが、
殺されたる白き犬の幽靈を、ば、
プラチナの映畫は繰返せり。
――東京遊行詩扁、五――
(東京遊行詩扁一、二、三の三扁は地上巡禮十二月読に所載)
とある。最後の萩原朔太郎の覚書の内容については、底本のこの前にある「蝕金光路」の私の注を参照されたい。また、この草稿が「習作集第九卷(愛憐詩篇ノート)」に「顏」として載る。以下に示す。
白晝の幻
顏
淺草公園活動寫眞のくらやみに
耳なき白き犬は殺されたり
慘酷にも殺されたりしが、
殺されたる白き犬の幽靈をば
プラチナの映畫は繰返せり、
底本は最後のものを整序したものと推定される。]
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