「萩原朔太郎詩集 Ⅴ 遺稿詩集」(小学館版)「第一(「愛憐詩篇」時代)」 (無題)(しづかにのびよ)
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しづかにのびよ
新綠の芽生のごとく
ふきあげの水も靑くぬれいでて
髮のにほひ薰ずるものぞかし
おしなべてかかる日ぐれの公園に
われは行く行くあらせいとうの花の下かげ。
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芽生のごとく心よ
ふきあげの水にも靑くぬれいでて
心をじつと抱きしめよ
六月はじめの公園に。
[やぶちゃん注:底本では制作年は未詳(記載なし)で、出典を『ノオト』とする。筑摩版全集では、「原稿散逸詩篇」にあるが、それは本底本に先行する小学館版「萩原朔太郎全集遺稿上」から転載されたもので、既に原稿は失われているようである。]
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