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2021/10/20

「萩原朔太郎詩集 Ⅴ 遺稿詩集」(小学館版)「第三(『月に吠える』時代)」 純銀の賽 / 附・草稿

 

  第三(『月に吠える』時代)

 

 

  純 銀 の 賽

 

みよわが賽(さい)は空にあり

空は透靑

白鳥はこてえぢのまどべに泳ぎ

卓は一列

同志の瞳は愛にもゆ

 

みよわが賽は空にあり

賽は純銀

はあとの「A」は指にはじかれ

緑卓のうへ

同志の瞳は愛にもゆ

 

みよわが光は空にあり

空は白金

ふきあげのみづちりこぼれて

わが賽は魚となり

卓上の手はみどりをふくむ。

 

ああいまも想をこらすわれのうへ

またえれなのうへ

愛は祈禱となり

賭博は風にながれて

さかづきはみ空に高く鳴りもわたれり。

 

[やぶちゃん注:太字は底本では傍点「ヽ」。底本巻末の「詩作品年譜」では、大正三(一九一四)年八月三十一日の制作年月日を示し、大正三年十月の『地上巡禮』を初出とする。筑摩版全集でも「拾遺詩篇」に同雑誌同月号を初出として載る。初出形を示す。

 

 純銀の賽

 

みよわが賽(さい)は空にあり、

空には透靑、

白鳥はこてえぢのまどべに泳ぎ、

卓は一列、

同志の瞳は愛にもゆ、

 

みよわが賽は空にあり、

賽は純銀、

はあとの「A」は指にはじかれ、

綠卓のうへ、

同志の瞳は愛にもゆ。

 

みよわが光は空にあり、

空は白金、

ふきあげのみづちりこぼれて、

わが賽は魚となり、

卓上の手はみどりをくむ。

 

ああいまも想をこらすわれのうへ、

またえれなのうへ、

愛は祈禱となり、

賭博は風にながれて、

さかづきはみ空に高く鳴りもわたれり。

            ―八月三十一日―

 

本篇とは、第三連の最後が異なる。しかし、これは筑摩版の方が正しいようである。「含む」ではイメージとしてはおかしいとは言えぬものの、どうも前との連関が悪く、「汲む」ですんなりと読める。

 また、筑摩版全集の『草稿詩篇「拾遺詩篇」』に「坑夫の歌」と題した本篇の草稿とする『本篇原稿一種一枚』とあるものが載る。以下に示す。誤字・脱字・歴史的仮名遣の誤りはママ。

 

  坑夫の歌

 

ああ、いまも思ひを凝らす我のうヘ

またえれなのうヘ

トバクは白金の祀禱となり風にながれ

愛は祈禱となり宴は光る魚となり

さかづきは高く高く空に合さる

み空に高く玻璃はあはさる

み空に玻璃は鳴りもわたれり

[やぶちゃん注:以上二行は並置。

   すゞしくも君にぬぐはる、

淚は

   おんきみの脣(くち)にぬぐはる、

[やぶちゃん注:以上の後半の前後は二行並置。]

みよ 見よ、いま、かゞやく空 より賽は投げられ

みよ空いまわが賽は空にあり

その銀は魚となり

その銀はいさなとなり

尾ひれきらめき

てえぶるは水をたぎらす

水をたぎらす綠卓のうヘ

するどく落ちて破るゝもの

純銀の賽のやぶるもの

ああ ああたゞたゞわが瞳のみそれを知る

えれなよ

わが君よ

[やぶちゃん注:以上二行は並置。

いまぞ靑空に向ひて破璃を鳴らせよ

[やぶちゃん注:また、編者後注によれば、この『「わが君よ/いまぞ靑空に向ひて破璃を鳴らせよ」は線でかこまれている』ともある。]

えれなよ

ああわが賽はすでに投げられ

そのするどさに肢體は やぶれ きゝづき 額は足はきゞつき

ああ瞳は光にめしひ

ああはや床に晶玉やぶれ

わがああはやトバクは風にながれて

さかづきは空に光れり「ちゝら」と靑空に鳴りもわたれり。

 

最後に編者注があり、『本稿下欄に次の記載がある』として、以下を示す。

 

 えれなよ

 瞳は光にめしひ

 そのするどさに足 やぶれ きゞゝき

 床に晶玉やぶれて

 見よいま空より賽は高くなげられ、

 えれなよ

 ああわが春はいたく投げられ

 2そのするどさに瞳はめしひ

 3 肉やぶれきゝづきやぶれ

 4床に晶玉やぶれつれども

 5はやわがトバクは風に流れて

 さかづきはちちとに靑空に鳴りもわたれり、

 

後注に、以上の下欄の記載については、『行頭の數字は著者の附したもの』とある。]

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