「萩原朔太郎詩集 Ⅴ 遺稿詩集」(小学館版)「第一(「愛憐詩篇」時代)」 (無題)(なでしこの花むらがり咲ける) / 「第一(「愛憐詩篇」時代)」~了
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なでしこの花むらがり咲ける
磯山の小松ばやしにわけ入れば
砂地にぬるる靴も鳴きいで
朝まだ早く松露の土をほりあぐる。
いさみて丘をはせ
ひそかに海を念ずれば
うみもかたむき湧きいでぬ。
[やぶちゃん注:底本では出典を『ノオト』とするのみ。筑摩版全集では、「原稿散逸詩篇」にあるが、それは本底本に先行する小学館版「萩原朔太郎全集遺稿上」から転載されたもので、既に原稿は失われているようである。本篇を以って「第一(「愛憐詩篇」時代)」は終わっている。
「松露」菌界ディカリア亜界担子菌門ハラタケ亜門ハラタケ綱ハラタケ亜綱イグチ目ヌメリイグチ亜目ショウロ科ショウロ属ショウロ Rhizopogon roseolus 。二針葉のマツ属 Pinus の樹林で見出され、それらの細根に、典型的な外生菌根を形成して生活する。安全且つ美味な食用茸の一つとして古くから珍重されてきたが、発見が容易でなく、希少価値が高い。さらに現代ではマツ林の管理不足による環境悪化に伴って産出量も激減し、市場には出回ることは極めて稀れになっている。栽培の試みもあるが、未だ商業的成功には至っていない。詳しくは参照したウィキの「ショウロ」を見られたい。]
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