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2021/10/18

「萩原朔太郎詩集 Ⅴ 遺稿詩集」(小学館版)「第二(淨罪詩篇)」 われの犯せる罪 / 附・「月に吠える」の「笛」の草稿の一部及びそれと本篇が載る原稿用紙の復元

 

  われの犯せる罪

 

われの犯せるつみを

ちちははのとがめたまはぬごとく

おほがみは罪したまはじ

ゆるさせたまへ。

 

[やぶちゃん注:底本では『遺稿』とし、推定で大正四(一九一五)年とある。筑摩版全集では、「未發表詩篇」にある。以下に示す。

 

  われの犯せる罪

 

われの犯せるつみを、

ちちははのとがめたまはぬごとく、

おほがみは罪したまはじ、

ゆるさせたまへ。 

               淨罪詩扁完

 

これは編者注があり、『本篇は原稿用紙の左半分に書かれ、「淨罪詩扁完」』[やぶちゃん注:「扁」はママ。]『とある。右半分には『月に吠える』の「笛」の「けふの霜夜の空に冴え冴え」以下五行が記されている』とあり、前半の記載に基づき、「淨罪詩扁完」を以上のように再現した。しかし、この注記は後半分は不親切で、正確には、

「月に吠える」の「笛」の草稿の中の『「けふの霜夜の空に冴え冴え」以下五行が記されている』

でなくてはいけないからである。詩集「月に吠える」の決定稿、及び、その初出には、「けふの霜夜の空に冴え冴え」という詩句自体が存在しないからである。私の『萩原朔太郎詩集「月に吠える」正規表現版 笛』を見られたい。注で初出(決定稿とは激しく異なる)も総て挙げてある。

 されば、ここで、その「笛」の草稿を以下に再現しておくことにする。これは、本篇のためには余り意味をなさないとは思われようが、「月に吠える」の「笛」の草稿・初出形・決定稿の推敲課程を知る重要な一つとなるからである。歴史的仮名遣の誤り・脱字はママ。

 

  

     ――既に別れし彼女にE女に――

 

あほげば高き松が枝に琴かけ鳴らす

小指には銀の爪をに紅をさしぐみて

ふくめる琴をかきならす

ああかき鳴らす人妻琴の調べにあはせ音にもあはせて

                    つれぶき

[やぶちゃん注:「あはせて」と「つれぶき」は並列配置。]

いみぢしき笛は天にあり

わが戀もゑにしも失へり

けふの霜夜の空に冴え冴え

松の梢を光らして

哀しむものゝ一念に

 

懺悔の姿をあらはしぬ

      凍らしむ

[やぶちゃん注:「あらはしぬ」と「凍らしむ」は並置。]

わが横笛は  天にあり

いじみき笛

[やぶちゃん注:「わが横笛」と「いじみき笛」(「いみじき笛」誤字であろう)のは並置。]

 

E女」はエレナであろう。序でなので、元の原稿用紙を復元してみる。

   *

【原稿用紙・右】

 

けふの霜夜の空に冴え冴え

松の梢を光らして

哀しむものゝ一念に

 

懺悔の姿をあらはしぬ

      凍らしむ

わが横笛は天にあり

いじみき笛

 

【原稿用紙・左】

 

  われの犯せる罪

 

われの犯せるつみを、

ちちははのとがめたまはぬごとく、

おほがみは罪したまはじ、

ゆるさせたまへ。 

 

               淨罪詩扁完

   *

私はしかし、この「われの犯せる罪」と「笛」とが無関係とは思っていない。それはこの二篇が書かれた同一原稿用紙の最後に萩原朔太郎が「淨罪詩扁完」と擱筆した意図に於いて、である。我々は萩原朔太郎の草稿原稿を見る機会は極めて稀れである。極端に当該詩篇に特化して整序・分離されてしまった刊行本では知り得ない創作の秘密が、そこには、まだ眠っているものと考える。

 なお、全集の『草稿詩篇「未發表詩篇」』に以下の本篇の草稿と考えてよい「祈」(本篇原稿二種二枚の一つ)と題する一篇がある。歴史的仮名遣の誤り。脱字はママ。

   *

 

 

 

われのおかせるつみを

ちちちちははのとがめ給へぬごとく

                    ゆるしたまはん

おほがみはとがめたはじ  つみしたは

                    つみしたはぢ

[やぶちゃん注:「ゆるしたまはん」と「つみしたはぢ」(「つみしたまはじ」の誤記)は並置残存。]

ゆるしたまへ

 

   *]

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