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2021/10/16

「萩原朔太郎詩集 Ⅴ 遺稿詩集」(小学館版)「第一(「愛憐詩篇」時代)」 街道 / 幻の「街道」の初期形か?

 

  街   道

 

道路は樹木を凍えしむ

うらがれとがれ

りんりんと梢に高く光れる針葉

しんに針葉の並木は哀しく

下に道路はうちふるへ

くねりつつ白くつらなり遠きに山脈の浮べるあり

背をまろくして街道を流れゆく見ゆ

いま眞珠のくだのごときもの

しきりに路上に燃えたちしが

ややありて光なき日輪に及ばんとす

この低き屋並をこえ

道路のうへにまたがり

いと高きにありてめんめんと愁ふるもの

絕えず愁ふるものをきく

そはぷろぺらのうなりのごとく

氷山のひび入るごとくにもきこゆれど

そのひびき遠き道路に及ばねば

尙も夕日の中にむらがり

あまたうないらは哀しげに遊び居るなり

 

はやたそがれ近き冬の日の道路に

らくだに似たる物象の長き列は近づきぬ

見よいまもきのふも

街道はくねりつつえいゑんの遠きにはす

 

[やぶちゃん注:底本では制作年は未詳(記載なし)で、出典を『ノオト』とする。筑摩版全集では「習作集第九巻(愛憐詩篇ノート)」にかなり似た「街道」がある。以下に示す。誤字・錯字・歴史的仮名遣の誤りは総てママである。

 

  道路街道

 

道路は樹木を凍えしむ

うらがれとがれ

りんりんと梢に高く光れる針葉

しんに針葉の並木はさびしく

下に道路はうちふるへ

ふとくしねりつつ遠きにはす。

遠きに高原の山脈ゆめと浮べるあり

旅びとゝむれくらく流れいで

音もなくうこのことろをすぎ行く見ゆ。

いま眞珠のくだの如きもの

しきりに路上にもえ立ちしが

やゝありて光なき日輪に及ばんとすびなんとす。

この低き屋並を越え

樹木をこえ

いと高きにありてめんめんと愁ふるひいづるも

そはぷろべらのうなりの如く

氷山のひゞいる如くにもきこゆれ共

その響、遠き地上に及ばねば

いまも夕日の中にむらがり居て

あまたうなひらは悲しげに遊び居るなり。

みよかゝる日の街道に

わが■■憂愁ははてしなき軌道を步む。みいづ。

 

■■」判読不能の抹消字である。思うに、これは本篇を更に推敲したもののように感じられる。最早、現存しない幻の「街道」の初期形と言うべきか。]

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