「萩原朔太郎詩集 Ⅴ 遺稿詩集」(小学館版)「第二(淨罪詩篇)」 (無題)(きのふけふ) / 筑摩書房版全集編者注に甚だ不審あり!
○
きのふけふ
われのたましひはけがされたり
いやはてにかさねしつみをばいかにせむ
いえすよ
きみがゆくゆくころものすそにしあらば
かなしみの音をだにひくくしぬびて
ふりつむ雪のうへをけりゆきたまひへ。
[やぶちゃん注:底本では『遺稿』として推定で大正四(一九一五)年作とする。筑摩版全集では「未發表詩篇」に所収するものがあるが、微妙に異なる。
○
日のたそがきのふけふ
われのたましひはけがされたり
きのふけふ
いやはてにつみはかさねしつみをばいかにせむ
ああいかなれば
あなた、いえすよ
あゆみゆく ゆくゆくきみがゆくゆくけごろものすそもて→うすからば→さむく→すそづますそにしあらば
かなしみのいぬを音をひくゝだにひくゝおと→おとなひゆく→雪 ふむか→雪つむうへをしぬびて
ふりつむ雪のうへをすりけちゆきたまひへ
削除部分をカットして示す。
○
きのふけふ
われのたましひはけがされたり
いやはてにかさねしつみをばいかにせむ
あなた、いえすよ
きみがゆくゆくけごろものすそにしあらば
かなしみの音をだにひくゝしぬびて
ふりつむ雪のうへをけちゆきたまひへ
本篇との異同は、三行目の「あなた、」があること、「ころも」が「けごろも」(毛衣)であること、「ひくゝし」と踊り字が使用されていること、「けりゆきたまへ。」が「けちゆきたまへ。」となっていることである。踊り字と「けちゆき」は誤字として書き換えたとしても、有り得ぬことではないが、前二者は有意に異なり、別原稿が存在した可能性を排除出来ない。さらに実は、そこには、
『* 「頌」「祈」(「われの犯せる罪」草稿詩篇)及び「(きのふけふ)」の三篇は同じ原稿用紙に書かれている。』
とある。これは同全集の『草稿詩篇「未發表詩篇」』にある本篇の草稿とする「祈」である。以下に示す。歴史的仮名遣の誤りや脱字・誤字は総てママである。
*
祈
われのおかせるつみを
ちちちちははのとがめ給へはぬごとく
おほがみはとがめたまはじ つみしたまは ず じ★ゆるしたまはん、//つみしたはぢ、★
[やぶちゃん注:「★」「//」の記号は私が附した。「ゆるしたまはん、」と「つみしたはぢ、」(恐らくは「つみしたまはじ」の誤記)の二つが、並置残存していることを示す。
« 「萩原朔太郎詩集 Ⅴ 遺稿詩集」(小学館版)「第二(淨罪詩篇)」 われの犯せる罪 / 附・「月に吠える」の「笛」の草稿の一部及びそれと本篇が載る原稿用紙の復元 | トップページ | 「萩原朔太郎詩集 Ⅴ 遺稿詩集」(小学館版)「第二(淨罪詩篇)」 秘佛 »