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2021/10/04

曲亭馬琴「兎園小説」(正編) 獼猴與蛇鬪 ほこりてふ

 

[やぶちゃん注:客員会員の京都の青李庵角鹿清蔵のもの。筆法家で上代様書家として知られた人物らしい。書信を馬琴が読み上げたものか。別個な二件だが、短いので一緒に挙げた。「獼猴」(ビコウ)は猿のこと。これも「猴」も皆、「さる」と訓じてよい。]

 

文政八年[やぶちゃん注:一八二五年。]八月兎園會     京 角鹿比豆流

   筑前御儒者井上佐市より京都若槻幾齋翁へ之書狀奥に、

怪談らしく思召さるべく候へ共、實事に付、爲御慰、申上候。去る六月初、弊邑管内、宗像郡初の浦と申す所の山圃に、煙草を作り置候處、何物かあらし候者有之候に付、百姓共申合、「獼喉之所爲」にて可有御座候間、「逐拂可申」とて、數十人、一山に入候處、獼猴、五十余居候に付、「扨社[やぶちゃん注:「さてこそ」。]」と、能々、見候處、中に長[やぶちゃん注:「たけ」。]壱丈二、三尺、圍[やぶちゃん注:「めぐり」。]一尺五、六寸の大蛇を取り圍み、方さに[やぶちゃん注:「まさに。」]鬪居申候。猿ども、口と手に、煙草の葉を持ち、蛇、前[やぶちゃん注:「まへの」。]猿にかゝり候へば、後猿、蛇尾を曳、其鬪、果しなき模樣に御座候故、所之獵師、鳥銃にて、蛇を打殺し申候。猴は火音に驚き、逃去申候。猴共、蛇の、煙草を嫌ひ候儀を、能く存候事、驚入申候。扨、其蛇を改見候處、腹、大に張居申候間、開胎仕候處、猴子二頭、吞居申候由。其所は治下より八里計の處にて、うきたる儀にては無御座候。

  是は、去年中、七月の書狀なり。 七月念三

[やぶちゃん注:「宗像郡初の浦」このような名の浦は現存しない。推理するに、旧宗像郡内であった現在の福岡県福津(ふくつ)市「勝浦(グーグル・マップ・データ。以下同じ。)、或いは、宗像市「神湊(こうみなと)」の崩し字の判読の誤りではあるまいか?

「壱丈二、三尺」三・六三~三・九四メートル。この大きさから本邦の最大種である有鱗目ヘビ亜目ナミヘビ科ナメラ属アオダイショウ Elaphe climacophora と断じてよい。同種の体調は通常は一・五~二・五メートルであるが、実計測記録ではないが、例外的に三メートルほどに達する個体もあるようであると、小学館「日本大百科全書」の記載にあった。三メートルの巨大個体が延伸して這えば、この長さに見えても、おかしいとは言えない。

「念三」二十三日のこと。「二十(廿)」の合音「ネム」が「念」の音に通じるところから、年や日などのそれに宛てる。]

文政八酉八月 兎圖之二

   〇ほりこてふ    京 角鹿比豆流

今はむかし、卯月のころ、洛の西なる木辻村といふ所に、數日遊びしことあり。其邊のわらは「もちつゝじ」の實を、とりて、喰ふ。是を「ほりこてふ」といひ、また、「猫の耳」ともいふとぞ。甚、にがきものなるを、なれては、味よきにや。「猫の耳」とは、其かたちのよく似たる故なるべし。「ほりこてふ」とは、いかにかくいふにや。

[やぶちゃん注:以下、底本では全体が一字下げ。]

解按ずるに、ホリコテフは「張子蝶」ならん。「ハ」、「ホ」、音通なり。「もちつゝじ」の實は、薄紅にして、聊、蝶のかたちに似たり。しかれども、その片なるところ、厚くして、且、堅し。譬へば、「張粘の蝶」の如し、「ハ」を「ホ」と唱ふるは、越後・上野人の、「ヱ」を「イ」と唱ふるが如く、西京の方言かもしらず。又、「猫の耳」といふも、猫の耳の裏のかたに似たればなり。すべては猫の耳に似たるものには、あらずかし。

  乙酉八朔         著作堂追記

[やぶちゃん注:「木辻」現在の「木辻通り」附近か。

「もちつゝじ」ビワモドキ亜綱ツツジ目ツツジ科ツツジ属モチツツジ Rhododendron macrosepalum 。実の写真がなかなかない。個人ブログ「HAYASHI-NO-KO」の「ツツジ モチツツジ(黐躑躅)」の写真がそれか。なんとなしに猫の耳に似ているような気はした。

「張粘の蝶」は「はりのりのてふ」か。敗れた障子を塞ぐのに和紙を蝶の形に切り取って「粘」る米糊を塗って「張」りつけたものか。]

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