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2021/10/10

「萩原朔太郎詩集 Ⅴ 遺稿詩集」(小学館版)「第一(「愛憐詩篇」時代)」 浮名

 

  浮   名

 

浮名をいとはば舟(ふね)にのれ

舟はながれゆく

いま櫓櫂(ろかい)の音(おと)を絕え

風も雨も晴れしあけぼのに

よしあしぐさのみだるる渚をすぎ

舟はすいすいと流れゆくなり

ああ舟にのりて行かば

くるほしきなみの亂れもここちよく

ちのみごの夜びえする

あやしきこゑもきかであるべきに

ふるとせひとにかくれて

わがはぐくみしいろぐさのはや涸れぬとぞ

けふきけば薄葉(うすえふ)に涙しほるる

よしゑやし

悲しきものはあだがたき 君ならなくに

はやも我が世をのがれいでばや

 

[やぶちゃん注:初出は大正三(一九一四)年五月号『創作』。以下に示す。

 

 浮名

 

浮名(うきな)をいとはゞ舟(ふね)にのれ、

舟はながれゆく、

いま櫓櫂(ろかい)の音(おと)を絕え、

風も雨も晴れしあけぼのに、

よしあしぐさのみだるる渚をすぎ、

舟はすいすいと流れゆくなり。

あゝ舟にのりて行かば

くるほしきなみの亂れもここちよく、

ちのみごの夜びえする、

あやしきこゑもきかであるべきに、

ふるとせひとにかくれて、

わがはぐくみしいろぐさのはや涸れぬとぞ、

けふきけば薄葉(うすやう)に淚しほるる、

えしやえし、

悲しきものはあだがたき、君ならなくに、

はやも我が世をのがれいでばや。

 

筑摩版全集校訂本文では、十三行目「しほるる」を「しをるる」と訂する。「習作集第九巻」の「浮名」は、

 

 浮名

 

浮名をいとはゞ舟にのれ

舟はながれゆく

いま櫓櫂の音(おと)を絕え

風も雨もはれしあけぼのに

よしあしぐさの亂るゝ渚をすぎ

舟はすいすいと流れゆくなり。

あゝ舟にのりて行かば

くるほしき浪のみだれもこゝちよく

ちのみごの夜びえする

あやしき呪もきかであるべきに。

ふるとせひとにかくれて、

わがはぐくみしいろぐさのはやしほれぬかれぬとぞ

けふきけば薄葉に淚しほるゝ

えしやえし、

哀しきものはあだがたき

君ならなくに

はやもわが世をのがれいではや。

 

である。]

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