萩原朔太郎詩集 遺珠 小學館刊 遺稿詩篇 鳥の巢の内部
鳥の巢の内部
鳥の巢をうかがへば
巢の中はぼんやりとうすぐらく
鼠いろの卵がひとつばかり
氣味わるく光りて
そのあたりいちめん
病人のかみの毛だらけなり。
ああ、じつに無數の髮の毛なり。
[やぶちゃん注:筑摩版全集では、「未發表詩篇」に以下のように載る。
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鳥の巢の内部
鳥の巢をうかがへば
巢の中はぼんやりとうすぐらく
鼠いろの卵がひとつばかり
氣味わるく光りて
そのあたりいちめん
病人のかみの毛だらけなり。
ああ、じつに無數のかみの毛なり。
三月十六日
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詩篇の後に筑摩版編者による、『本稿は未發表詩篇「梢」と同じ原稿用紙に書かれている。』とある。「梢」は本底本では、同じ「遺稿詩篇」パートの、本篇より十二篇前に配されてある。最終行の「髮」が「かみ」である以外には異同がないので、恐らくは筑摩版と同一原稿であろうと私は推測する。なお、このクレジットは全集の「未發表詩篇」内の配列から見て、大正四(一九二五)年三月十六日である可能性が高い。]
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