萩原朔太郎詩集 遺珠 小學館刊 「愛憐詩篇」拾遺 (無題)(靑空の下を步み行かばや)
[やぶちゃん注:最後から二行前の「*」は底本編者(後の編者による注参照)によるマーキング。]
○
靑空の下を步み行かばや
ひとりあたりをかへりみ
うたはんとして低く瞳を伏せたり
ああ十月半ばの空高く
透靑遠きに流れたり
かくして林をいで
行人の秋を問ふあへば
しきりに愁ひしたたり落つるによりて
つめたく路上に坐れるなり
ああ友の呼ばへる聲もいとはるか
みづうみのほとりに鳴きつれ連山の麓に去りゆく鳥
*
この靑空の下を步み行かばや。
*印のヶ所は一行全く不明。
[やぶちゃん注:筑摩版全集には無題詩としての本篇は載らない。後の補巻の索引にも載らないので、筑摩版全集不掲載詩篇と採っておく。しかし、実は本篇「靑空」と勝手に仮題して、その後に「○」を附して、第三巻の『草稿詩篇「習作集第八卷・第九卷」』に本篇を小学館版から転載しているのである。則ち、詩集「靑猫」の決定稿「靑空」(リンク先は私の正規表現版)の草稿扱いとして、しかも参照注記もせずにやらかした、先の「(悲しや 侘しや)」と同じ極めて不親切な仕儀である。甚だ腹の立つこと、極まりない。
「透靑」一般名詞では見たことがない。「とうせい」と読んでおく。意味は「透き通った青」で違和感はない。萩原朔太郎の造語と採る。]
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