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2021/11/27

甲子夜話卷八十七 4 蛇塚(フライング)

87ー4 蛇(ヘビ)塚

[やぶちゃん注:亭馬琴「兎園小説外集」の「蛇怪」・「へびこしき」に、必要上から、単発でフライングする。全く同一の出来事(場所と年月日及び事件当事者の名・年齢は完全に一致する)であるからである。画像は底本のものをトリミング補正した。]

 

 丙戌六年廿五日、小石川三百坂にて蛇多く集り、重累して桶の如し。往來の人步を留て皆見る。その邊なる田安殿の小十人高橋百助の子千吉、十四歲なるが云ふには、この如く蛇の重りたる中には必ず寳ありと聞く。いざ取らん迚、袖をかゝげ、右手を累蛇の中にさし入れたるに、肱を没せしが、やゝ探て果て銭一を獲たり。見るに、篆文の元祐通寳錢なり。是より蛇は散じて行方知れずと。奇異と云べし。

 

Hebiduka1

 

[やぶちゃん注:キャプションは、上部に、

傳說ノ圖

中央に右向き横転で、

コノ渡一尺六、七寸。

左下方に縦書で、

高モ、一尺六、七寸。

とある。]

予因て「泉貨鑑」に載るものを附出す。

 

Hebiduka2

 

[やぶちゃん注:この図の銭は、しかし、

元踊祠寳

と書いてある。中文サイトのこちらの画像を参照されたい。これは北宋の哲宗の元佑(一〇八六年~一〇九三年)年間の鋳造の宋銭である。「兎園小説外集」にあるのは、北宋の仁宗の景佑元年(一〇三四年)に鋳造された中国の宋銭で、異なる。

 

追記す。田舍にてはこれを蛇塚(ヘビヅカ)と云て、往々あることとぞ。

■やぶちゃんの呟き

「丙戌六年」文政九(一八二六)年。

「小石川三百坂」後に出す曲亭馬琴「兎園小説外集」の当該話の私の注を参照されたい。

「小十人」同前。

「累蛇」「るいじや」と音読みしておく。

「探て」「さぐりて」。

「果て」「はたして」。

「元祐通寳錢」北宋の哲宗の元祐年間(一〇八六年~一〇九三年)に鋳造された宋銭。中文サイトのこちらを参照。

「泉貨鑑」「和漢古今泉貨鑑」(わかんここんせんかかがみ)。江戸で寛政八(一七九六)年に刊行された朽木龍橋(くつきりゅうきょう)撰になる貨幣図説。龍橋は号で本名は朽木昌綱(寛延三(一七五〇)年~享和二(一八〇二)年。列記とした丹波福知山藩藩主にして、古銭研究家・蘭学者。隠岐守。古銭を愛好、収集・研究し、他に「新撰銭譜」・「西洋銭譜」等を刊行している。また、世界地理に詳しく、「泰西輿地図説」を著わしてもいる蘭癖大名である。

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