萩原朔太郎詩集 遺珠 小學館刊 「愛憐詩篇」拾遺 晩冬哀詩/ 筑摩版全集未収録詩篇(但し、「冬日哀語」の表題で表記・表現違いで酷似する一篇は有り)
晩 冬 哀 詩
いのるより
空もえしかば
かはべにたてるおみなご
しもつきの
ゆくふねにかぢをたえ
ききと
ききと
ああかへすべきよしもなし。
[やぶちゃん注:筑摩版全集には本篇は載らない。後の補巻の索引にも載らないので、筑摩版全集不掲載詩篇と採っておくが、実は同全集の「習作集第九卷(愛憐詩篇ノート)」の中に「冬日哀語」という別題で表記・表現違いの酷似する以下がある。
*
冬日哀語
いのるより
空もえしかば
かはべにたてるおすみなご
しもつきの
ゆく舟に楫をとり
ききと
ききと
あゝかへすべきよしもなし、
*
相同ではないので、異稿とすべきものである。にも拘わらず、筑摩版では、大三卷の『草稿詩篇「習作集第八卷・第九卷』の最後に、詩篇を示さず、「冬日哀語」と題のみを小文字で示し、筑摩版編者による『*小學館版『萩原朔太郎全集』には「晩冬哀詩」と題して收錄されている』とのみあって、詩本文を載せない。これは如何にもおかしい仕儀である。私は小学館版を見ることが出来ないが、怪しい臭いがプンプンするのである。]
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