萩原朔太郎詩集 遺珠 小學館刊 「愛憐詩篇」拾遺 (無題)(白みゆく月の夜なれや)+(つきずやみせぬうづまき 音もなく二人さしより)
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白みゆく月の夜なれや
このしめりたる潮風にしばなくかもめ
燐光の靑さに水ながれいで
つきせぬ歡魚の身ともなれば
君こそ
ああまたさしぐみいづる淚み膝をぬらしぬ
ああかの高き宿星に
*
つきずやみせぬうづまき 音もなく二人さしより
淚ぐましき露臺の椅子にうち向ふ。
*印のあたり、部分的に曖昧である。
[やぶちゃん注:「*」のマーキングと最後の注は底本編者によるもの。本篇は筑摩書房版全集では『草稿詩篇「原稿散逸詩篇」』にあるが、小学館版「萩原朔太郞全集」元版の「別册 遺稿上卷」からの転載であり、既に原稿が失われていることが判る。]
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