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2021/11/23

萩原朔太郎詩集 遺珠 小學館刊 拾遺詩篇 初夏の祈禱 / 筑摩版「拾遺詩篇」所収の「初夏の祈禱」の別稿

 

  初 夏 の 祈 禱

 

主よ、

聖なる神よ。

 

われはつちを掘り

つちをもりて

日毎におん身の家畜を建設す

いま初夏きたり

主のみ足は金屬のごとく

薰風のいただきにありて輝やき

われの家畜は新綠の蔭に眠りて

ふしぎなる白日の夢を畫けり

ああしばし

ねがはくはこの湖しろきほとりに

わがにくしんをしてみだらなる遊戲をなさしめよ。

 

いま初夏きたる

野に山に

榮光榮光

榮光の主とその下僕(しもべ)にあれ。

あめん。

 

[やぶちゃん注:底本末の「詩作品發表年譜」 によれば、制作年月日を大正三(一九一四)年五月八日とし、初出誌を大正三年六月発行の『詩歌』とする。筑摩書房版全集でも「拾遺詩篇」に載り、同雑誌の同年六月号とする。但し、その初出とは微妙に異なる箇所がある。以下に示す。「堀」「戯」はママ。

   *

 

 初夏の祈禱

 

主よ、

いんよくの聖なる神よ。

 

われはつちを堀り、

つちをもりて、

日每におんみの家畜を建設す、

いま初夏きたり、

主のみ足は金屬のごとく、

薰風のいたゞきにありて輝やき、

われの家畜は新綠の蔭に眠りて、

ふしぎなる白日の夢を畫けり、

ああしばし、

ねがはくはこの湖しろきほとりに、

わがにくしんをしてみだらなる遊戯をなさしめよ。

 

いま初夏きたる、

野に山に、

榮光榮光、

榮光いんよくの主とその僕(しもべ)にあれ。

あめん。

          ―一九一四、五、八―

 

   *

読点や誤字・異体字は別として、「いんよく」が二箇所で排除されているところからは、別稿の草稿或いは改稿ととるべきものか。]

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