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2021/11/03

「萩原朔太郎詩集 Ⅴ 遺稿詩集」(小学館版)「第三(『月に吠える』時代)」 晩景

 

  晚   景

 

わたしの顏ははうれんさうのくさ

あほざめた葉つぱのやうに

うすつぺらのやつれた顏が

白い風景の中でびらびらうごく。

また神經はおいらん草のはなびら

しげる笹むらの葉末から、

そよそよとほそい手くびをふりうごかす

そこにはたましひの瞳がすわり

光るよもぎふの穗さきをこえて

ほのかにきゆる遠浪の沖をみつめてゐる。

ああ わたしの裸身(はだか)はいばらのとげ

からだいちめんにするどく生えて

ひきつる痛みにびくびくしながら

さむしい晚景の中でふるへてゐる。

 

[やぶちゃん注:太字は底本では傍点「ヽ」。底本では『(五月作)』という日付け制作クレジットがあり、推定で大正三(一九一四)年とする。筑摩版全集では、「未發表詩篇」の中に以下がある。太字は同前。歴史的仮名遣の誤りはママ。

 

 晩景

 

わたしの顏はほうれんそうのくさ、

あほざめた葉つぱのやうに、

うすつぺらのやつれた顏が、

白い風景の中でびらびらうごく。

また神經はおいらん草のはなびら、

しげる笹むらの葉末から、

そよそよとほそい手くびをふりうごかす、

そこにはたましひの瞳がすはり、

光るよもぎふの穗さきをこゑて、

ほのかにきゆる遠浪の沖をみつめてゐる。

ああ わたしの裸身(はだか)はいばらのとげ、

からだいちめんにするどく生えて、

ひきつる痛みにびくびくしながら、

さむしい晚景の中でふるへてゐる。

            ――五月作――

 

クレジットから本篇も同原稿をもとにしたもので、読点を除去し、歴史的仮名遣を不全に修正したものと思われる。なお、『「萩原朔太郎詩集 Ⅴ 遺稿詩集」(小学館版)「第三(『月に吠える』時代)」 蝕金光路 / 附・別稿その他(幻しの「東京遊行詩篇」について)』の注で示した「晩景」という詩篇があるが、本篇との関係性は認められないと私は思う。

 なお、全集の『草稿詩篇「未發表詩篇」』に「晩景」と題する本篇の推考過程を示すものがあり、『本篇原稿三種四枚』とある。以下に示す。歴史的仮名遣の誤りはママ。

   *

 

  晩景

 

わたしの顔ははうれんそうの草

あほざめた葉つぱのやうに

白い風景のなかでびらびらうごく

うすつぺらの病氣の顏

またしんけいはおいらん草の花びら

しげる笹むらのはのの葉のすきまから

なよなよとそよそよとながいこんな手くびをふりうごかす

そこにはたましひの眼がすわり

ながい草 木の光るよもぎふの穗さきをこえ

ほのかに海の 遠鳴りを 遠浪をながめてゐる遠海の遠浪沖をみつめてゐる

ああわたしの裸身にはいばらのとげ

からだいちめんにするどく生え

はげしい★きりこむ//ひきつる//ぢごくの★いたみに★びくびく//ぴりぴり★しながら

[やぶちゃん注:「★」「//」は私が附した。上方の「きりこむ」「ひきつる」「ぢごくの」は三案併存で、下方の「びくびく」「びりびり」は二案併存を示す。]

さむしい晩景のなかでふるえてゐる

 

   *]

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