萩原朔太郎詩集 遺珠 小學館刊 「愛憐詩篇」拾遺 (無題)(あさまだきここに來りて)+(さびしや木の芽も露にしめりて)
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あさまだきここに來りて
わがつむは宵待草の白きなれども
君を待つ心やいかに
この指にはさめば草もほのぼの
そらに黎明のみづがね流れたり
いざやわが身をば草木のかげに橫たへ
ひそかに指を草にあて
われは遠きあかつきの
*
さびしや木の芽も露にしめりて
その繪具もて君が浴衣をひたすらむ
かたばみぐさもまだ起きいでぬあかつきに
かくまでに心あがりて
流るる岸に淚をうかべ
* この二篇はノオトの同じ頁に並んで書かれ、
同一のものか、また別個の作品にしようとした
のか判別できぬので、便宜的にかく配列した。
[やぶちゃん注:編者注記から見て、「*」のマークはノートには存在しないものと思われる。本篇は筑摩書房版全集では『草稿詩篇「原稿散逸詩篇」』にあるが、小学館版「萩原朔太郞全集」元版の「別册 遺稿上卷」からの転載であり、既に原稿が失われていることが判る。]
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