曲亭馬琴「兎園小説」(正編) 古代の呼名
[やぶちゃん注:発表者は同じく客員の青李庵。最初の記名(業種の特別通称)は下インデント三字上げであるが、引き上げ、字空けも詰めた。]
○古代の呼名
江州伊香郡金居原村百姓
梨之木 藤之棚
萬 代 上之山
堂之坂 川 端
右之村方は、山中にて炭燒を業に致し居候。往古は一村不殘、右樣の名を付居候由に候へ得共、追々、「何次郞」・「何右衞門」などゝ改名致し、當時宗門帳に、右六人之者、右樣之名を附居申候。
同郡奧河並村百姓 太 夫
右村方にては、婦、相果候夫は、何れも「太夫」と、年々、宗門帳ニ相附居申候。如何成故と相尋候へば、「夫、相果候婦を、後家と申すも、同じ事。」と申し居候。
右彥根家富田甚右衞門殿の話なり。
[やぶちゃん注:「江州伊香郡金居原村」旧滋賀県伊香(いか)郡杉野村。現在の長浜市の北東部、木之本町地区の山間部、杉野川の流域、国道三百三号の沿線に相当する。木之本町木之本周辺(グーグル・マップ・データ。以下同じ)。
「同郡奧河並村」旧伊香郡奥川並村。滋賀県の最北部の旧丹生村(にうむら)。現在の長浜市北部(旧余呉町北東部)。この附近(集落跡が残る)。]