萩原朔太郎詩集 遺珠 小學館刊 「愛憐詩篇」拾遺 齒痛
齒 痛
この高原にたかぶり怒り
ひとり哀しみやぶれ
日毎に祈りて景物を光らしむ
しんにこの齒痛は皮膚をこがし
わが神經をして路上に燃えしむる
みよ胸より發する齒痛は
するどく幼樹の幹を裂く
あはれ痛みの烈しきにたえずして
日の下にけふもわが身の踊れるなり
[やぶちゃん注:「たえず」の表記はママ。本篇は筑摩書房版全集では『草稿詩篇「原稿散逸詩篇」』にあるが、小学館版「萩原朔太郞全集」元版の「別册 遺稿上卷」からの転載であり、既に原稿が失われていることが判る。]
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