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2021/11/30

萩原朔太郎詩集 遺珠 小學館刊 遺稿詩篇 病氣の探偵 / 筑摩版全集所収の「病氣の探偵」の草稿原稿と同一と推定

 

  病 氣 の 探 偵

 

がらんどうの空家の五階

永遠に閉ぢられた九つの窓

厚ぼつたいかあてんの沈默

このへんに蒸しあつい晚だが

探偵は部屋の隅から

一方の隅へ步いて居る。

部屋のまん中に木製の椅子

電氣仕掛の秘密の椅子だ

だがかわいそうに

私の探偵はなにも知らずに

不幸な瞳(ひとみ)がぢつと見つめて居る。

みつめる床の上に

亞砒酸の光る粉末

鑛物性の哀しい微光……

どうかして靑白い肢體が

エレキじみた哀傷にしびれるときさヘ

探偵はなにも知らないのだ。

その背後(うしろ)の壁に

ぬりこめられた幼兒の毒殺屍體でさヘ。

この遠い祕密の空部屋に

ぢつと自分のたましひをみつめながら

たつた一人でふるえて居るよ

おお氣の毒な病氣の探偵よ

 

[やぶちゃん注:太字は底本では傍点「ヽ」。「かわいそうに」「ぢつと」はママ。筑摩版全集では、「習作集第九卷(愛憐詩篇ノート)」に同題で以下のようにある。歴史的仮名遣の誤り及び誤字らしい「徵光」等はママ。

   *

 

  病氣の探偵

 

がらんどうの空家の五階

永遠に閉ぢられた九つの窓

厚ぼつたいかあてんの沈默

このへんに蒸しあつい晚だが

探偵は部屋の隅から

一方の隅へ步いて居る

部屋のまん中に木製の椅子

電氣仕掛の祕密の椅子だ

だがか愛いそうに

私の探偵はなにも知らずに

不幸な瞳がぢつと見つめて居る

みつめる床の上に

亞砒酸の光る粉末

鑛物性の哀しい徵光……

どうかして靑白い肢體が

エレキじみた哀傷にしびれるときさヘ

探偵はなにも知らないのだ

その背後の壁にぬりこめられた幼兒の毒殺屍體でさヘ

この遠い祕密の空部屋に

ぢつと自分のたましひをみつめながら

たつた一人でふるえて居るよ

おお氣の毒な病氣の探偵

 

   *

本篇には、以上のコーダの四行が存在しない。傍点やルビもなく、表記も微妙に違う。ところが、同全集同巻の後にある『草稿詩篇「習作集第八卷・第九卷」』に以下がある。太字は底本では傍点「ヽ」。歴史的仮名遣の誤りや誤字(「空部家」は「空部屋」(からべや)の誤記か)はママ。

   *

 

 毒殺事件病氣の探偵

 

がらんどうの空家(あきや)の五階、

永遠に閉ぢられた九つの窓、

この厚ぼつたいかあてんの沈默、

このへんに蒸あつい晩だが、

探偵は部屋の隅から、

一方の隅へ步いてくる、

部屋のまん中に木製の椅子、

電氣仕掛の木製 殺人の祕密の椅子

だがかわいそうに

不幸な探偵は何も知らないのだ、

不幸な瞳がぢつとみつめて居る、

みつめる床の上に

亜砥酸の光る粉末

鑛物性の哀しい微光……

探偵のどうかして瘠せた肢體が

エレキじみた哀感にしびれるときさヘ

だが探偵はなにも知らないんだ

そのうしろの暗い壁には、塗りこめられた毒殺*幼兒の毒殺死體でをさヘ//女の手、足さへ、*[やぶちゃん注:以上の「*」「//」の記号は私が打った。これで挟んだ二つの詩句は並置残存である。]

靑ざめた 我執

この氣持の惡い

ああこの遠い遠い世界の祕密の靈智空部家のまん中に、にぢつと自分をみつめて居る、

たつた一人でふるへて居る

ぢつと想に

おお氣の毒な私の病氣の探偵よ、

 

   *

細部の異同や並置部などの問題はあるものの、これはほぼ相同に近いと言える。同一原稿と見做してよいように私には思われる。]

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