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2021/11/16

萩原朔太郎詩集 遺珠 小學館刊 「愛憐詩篇」拾遺 (無題)(悲しや 侘しや)

 

  

 

悲しや 侘しや

ここは異域のいやはてに

目路のかぎりはうすあかり

とんとんとろりと物の怪が

地軸のはてをはせめぐる

うすら侘しき日の步み

雲ふきまくるくらやみに

眼ばかり光る風車

風肅々と吹きめぐり

遠方にすさまじき

異形のものの走りゆく

遠い異域の夕まぐれ

身うちにそひて怖え泣く

きちがひのドンキホーテの片意地こそ哀しけれ

かたく立てたる槍先に

うれひは到るよせきたる。

 

[やぶちゃん注:「怖え泣く」「おびえなく」と訓じておく。筑摩版全集には無題詩としての本篇は載らない。後の補巻の新索引にも載らないので、筑摩版全集不掲載詩篇と採っておく。しかし、実は筑摩版には第三巻の『草稿詩篇「習作集第八卷・第九卷」』に、解題から、小学館版全集から転載したとして、「ドン・キホーテ」と勝手に題を附しておいて、後に「○」を添えて、本篇が載る。これは、筑摩版第二卷「習作集第九卷(哀憐詩篇ノート)」に載る、以下のものを校訂本文で採用した、その草稿扱いという処理を意味しているのである。それを以下に示す。表は総てママ。

   *

 

 ドン・キホーテ

 

悲しや悲しや

こゝは異域のいやはてに

とんとんとろりと物の怪が

地軸のはてをはせめぐる

うすら侘しき日の步み

 

ほのくらやみに

眼ばかり光る粉挽車

風肅々と吹きめくり

遠方にすさまじき

異形のものゝ馳り行く

 

遠い異域の夕まぐれ

身うちにそひて怖え泣く。

きちがひの

キホーテの片意地こそ悲しけれ

固く立てたる槍先に

うれひひたによせきたる。

   *

筑摩版全集の問題点は、勝手に題名をつけたり、それぞれが草稿関係にある並立状態にある詩篇を、参照注記を附さずに、離れた別巻に載せている点である。これは甚だ不親切と言わざるを得ないのである。

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