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2021/12/03

萩原朔太郎詩集 遺珠 小學館刊 斷片 炎天 / 筑摩版全集の「未發表詩篇」所収の「炎天」の別稿

 

  炎  天

 

ひとり樹木によりて

あふげぱ

しげる梢の葉うらから

天がまつさをに光つて居た

足をあげて强くふめぱ

土壤にふかく根がひろごり

わたのやうにもつくりとふくらんでゐた

八月下旬の炎天

ひとり樹木にすがりついて

 

[やぶちゃん注:筑摩版全集の「未發表詩篇」に以下が載る。歴史的仮名遣の誤りは総てママ。□は判読不能字。

   *

 

 炎天

 

ひつそり ひとり樹 下に立ち 木により そひ

あほげぱ

しげる梢の葉うらから

天がまつさをに光つて居

樹の□下に足をあげて地を强くふめぱ

土壤にふかく根がひろごり

地面の下がもつくりとして、

地がわたのやうにもつくりとふくらんで居

八月下旬の炎天

ひとり樹木にすがりついて

おれは年も二十八。

女を知ら抱かぬ寂しさに

春の日ひねもす 一人生くる にたえ 日の寂しさに

八月下旬の炎天を

身うちの熱に たえかね こらへかね

七月中旬

┏樹木にすがり 抱きすがりついて泣いて居た、居る

┗炎えあがる樹木に抱きついた

 

   *

最後の「┏」及び「┗」は私が附したもので、この二行は並置残存であることを示す。整序して見る。

   *

 

 炎天

 

あほげぱ

しげる梢の葉うらから

天がまつさをに光つて居た

足をあげて强くふめぱ

土壤にふかく根がひろごり

わたのやうにもつくりとふくらんで居た

おれは年も二十八。

女を抱かぬ寂しさに

┏樹木にすがりついて泣いて居た、

┗炎えあがる樹木に抱きついた

 

   *

筑摩版の草稿で削除されたものが本篇では生きていること、表記に微妙な違いがあることから、思うに、筑摩版以前の同一の詩篇の別稿草稿と考えてよかろう。]

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