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2021/12/27

萩原朔太郞詩集「蝶を夢む」正規表現版 天路巡歷

 

   天路巡歷

 

おれはかんがへる

おれの長い歷史から

なにをして來たか

なにを學問したか

なにを見て來たか。

 

いつさいは祕密だ

だがなんて靑い顏をした奴らだ

おれの腕にぶらさがつて

蛇のやうにつるんでゐた奴らだ

おれは決して忘れない

おれの長い歷史から

あいつらは

死よりも恐ろしい祕密だ。

 

おれはかんがへる

そのときまるであいつらの眼が

おれの手くびにくつついてゐたことを

おれの胴體に

のぞきのがねを仕掛けた奴らだ

おれをひつぱたく

おれの力は

馬車馬のやうにひつぱたく。

 

そしてだんだんと

おれは天路を巡歷した

異樣な話だが

おれはじつさい 獨身者(ひとりみ)であつた。

 

[やぶちゃん注:「のぞきのがね」はママ。初出から「のぞきめがね」(覗き眼鏡)の誤植である。初出は大正四(一九一五)年一月号『異端』。初出形を以下に示す。

   *

 

 天路巡歷

 

おれはかんがへる、

おれの長い歷史から、

おれはなにをして來たか、

なにを學問したか、

なにを見て來たか。

 

いつさいは秘密だ、

だがなんて靑い顏をした奴らだ、

おれの腕にぶらさがつて、

蛇のやうにつるんでゐた奴らだ、

おれは决して忘れない、

おれの長い歷史から、

あいつらは、

死よりも恐ろしい秘密だ、

 

おれはかんがへる、

そのときまであいつらの眼が、

おれの手くびにくつゝいてゐたことを、

おれの胴體に、

のぞきめがねを仕掛けた奴らだ、

おれをひつぱたく、

おれの力は、

馬車馬のやうにひつぱたく。

 

そしてだんだんと、

おれは天路を巡歷した、

異樣な話だが、

おれは實際、獨身者(ひとりみ)であつた。

 

   *

各連最終行以外に総ての行末(に読点が打たれてあること最終行は途中にも打たれてある)、「秘」「决」「實際」の字体異同を除くと、第三連二行目が「そのときまであいつらの眼が、]が大きな異同で、本篇では「そのときまるであいつらの眼が」である。ここは「まで」では微妙に同連内での続き具合に躓きが起こるので、「まるで」の初出の際の原稿の脱字或いは誤植が疑われる。]

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