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2021/12/06

萩原朔太郎詩集 遺珠 小學館刊 斷片 (無題)(ひとりぼんやり) / 筑摩版全集の「未發表詩篇」にある(無題)(頭痛の原因をしらべるために)の別稿断片と推定

 

  

 

ひとりぼんやり

病人はつくづくと考へこんだ

ああわたしの疾患の柱のありかを

あの靑空のおくふかくに

海の上をゆく船のやうに

とほくとほくゆく手に見ることができる

またこし方をかへりみるときはうらがへる草葉のうれを

 

[やぶちゃん注:「うれ」は「末(うれ)」で、草の葉や茎及び木の枝の先端。梢。うら。これは筑摩版全集の「未發表詩篇」にある、無題の以下の一部とほぼ一致する。表記の誤りは総てママ。「𣐙」は恐らくは「核」の誤字。□は底本の判読不能字。

   *

 

 

 

僕の頭痛の原因をしらべるために

わたしはあるとき草むらの中をあるいてゐた

さむしい十月の野原のなか に病人の姿が浮んでみえたきらきらする夏の野原をだんだんととぼとぼとたどりながら

そうと→はれ→ひつそり→ひとりぼんやり 春空をあほいで

病人はつくづくと考へて、 思ひ、ためいきをついた考へこんだ

ああわたしの 頭痛疾患のありかをば→𣐙 いまはしい𣐙𣐙のありかを

わたしはあきらかに天から□

あの靑空のおくふかにふかくよりしたゝりお

海の上をゆく船のやうに

とほくにとほくゆく手に見ることができる

またふりかへるまたこし方をかへりみるときさヘ→るときは

うらがへる草葉のうれを

わたしのなやましい足音の

はてしもなくつゞいて居る のをみる 小路の末を

わたしは草の實をつんでかみしめながら

風しん花のやうにとびあるいた→くものをてゐる

 

   *

編者注があり、『最終行の「風しん花」は原文のまま』とあるが、「風信花」で、ヒヤシンスの異名である。整序してみる(「𣐙」は「核」に代え、最後の「あるてゐる」は「あるいてゐる」の脱字と断じて、孰れも特異的に挿入した。底本の校訂本文もそうなっている)。

   *

 

 

 

頭痛の原因をしらべるために

あるとき草むらの中をあるいてゐた

さむしいきらきらする夏の野原をとぼとぼとたどりながら

病人はつくづくと考へこんだ

ああわたしの疾患の核のありかを

あの靑空のおくふかくに

海の上をゆく船のやうに

とほくにとほくゆく手に見ることができる

またこし方をかへりみる

うらがへる草葉のうれを

風しん花のやうにとびあるいてゐる

 

   *

御覧の通り、草稿の削除前の部分を生かすと、ほぼ一致することが判るので、筑摩版の別草稿断片であろう。]

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