萩原朔太郎詩集 遺珠 小學館刊 遺珠 「竹」(「月に吠える」版)・「月光と祈禱」(「竹」の初出形)
竹 『月に吠える』收載
光る地面に竹が生え
靑竹が生え
地下には竹の根が生え
根がしだいにほそらみ
根の先より纎毛が生え
かすかにけぶる纎毛が生え
かすかにふるへ。
かたき地面に竹が生え
地上にするどく竹が生え
凍れる節々りんりんと
靑空のもとに竹が生え
竹 竹 竹が生え。
[やぶちゃん注:「『月に吠える』收載」の位置はママ。編者注。しかし、この萩原朔太郎の詩篇中、最も知られた名篇の引用は、これ、正確ではない。既に私は『萩原朔太郎詩集「月に吠える」正規表現版 竹 (同題異篇)』で示しているが(この前に配されてある同題の「竹」は『萩原朔太郎詩集「月に吠える」正規表現版 竹』を見られたい)、由々しき問題なので、以下に示す。
*
竹
光る地面に竹が生え、
靑竹が生え、
地下には竹の根が生え、
根がしだいにほそらみ、
根の先より纎毛が生え、
かすかにけぶる纎毛が生え、
かすかにふるえ。
かたき地面に竹が生え、
地上にするどく竹が生え、
まつしぐらに竹が生え、
凍れる節節りんりんと、
靑空のもとに竹が生え、
竹、竹、竹が生え。
*]
竹
『詩歌』大正四年二月號(「竹」原型)
新光あらはれ、
新光ひろごり。
光る地面に竹が生え
靑竹が生え
地下には竹の根が生え
根がしだいにほそらみ
根の先より纎毛が生え
かすかにけぶる纎毛が生え
かすかにふるゑ。
かたき地面に竹が生え
地上にするどく竹が生え
まつしぐらに竹が生え
凍れる節節りんりんと
靑空のもとに竹が生え
竹、竹、竹が生え。
祈らば祈らば空に生え
罪びとの肩に竹が生え。
[やぶちゃん注:「『詩歌』大正四年二月號(「竹」原型)」は編者注。この引用も多量の読点と「節節」のルビを除去しており、不全で気に入らない。やはり『萩原朔太郎詩集「月に吠える」正規表現版 竹 (同題異篇)』で示しているが、煩を厭わず示す。歴史的仮名遣の誤りはママ。
*
竹
新光あらはれ、
新光ひろごり。
光る地面に竹が生え、
靑竹が生え、
地下には竹の根が生え、
根がしだいにほそらみ、
根の先より纎毛が生え、
かすかにけぶる纎毛が生え、
かすかにふるゑ。
かたき地面に竹が生え、
地上にするどく竹が生え、
まつしぐらに竹が生え、
凍れる節節(ふしぶし)りんりんと、
靑空のもとに竹が生え、
竹、竹、竹が生え。
祈らば祈らば空に生え、
罪びとの肩に竹が生え。
――大正四年元旦――
*
なお、私の二〇一三年の古い仕儀の「竹 萩原朔太郎 (「月に吠える」の「竹」別ヴァージョン+「竹」二篇初出形)」がある。]
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