萩原朔太郎詩集「純情小曲集」正規表現版 櫻
櫻
櫻のしたに人あまたつどひ居ぬ
なにをして遊ぶならむ。
われも櫻の木の下に立ちてみたれども
わがこころはつめたくして
花びらの散りておつるにも淚こぼるるのみ。
いとほしや
いま春の日のまひるどき
あながちに悲しきものをみつめたる我にしもあらぬを。
[やぶちゃん注:初出は大正二(一九一三)年五月号『朱欒』。但し、無題。以下に示す。
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○
櫻のしたに人あまたつどひ居ぬ。
なにをしてあそぶならむ
われも櫻の木の下に立ちてみたれども
わがこゝろはつめたくして
花びらの散ちておつるにも淚こぼるゝのみ
いとほしや
いま春の日のまひるどき
あながちに哀しきものをみつめたる我にしもあらぬを
*
やはり、筑摩版全集の「習作集第八卷(愛憐詩篇ノート)」に、本篇の草稿が載る。以下に示す。
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さくら
櫻の下に人あまたつどひ居ぬ
何をしてあそぶならん
われも櫻の木の下に立ちて見たれども
わがこゝろはつめたくして
花びらの散ちて落つるにも淚こぼるゝのみ
いとほしや
いま春の日のまひるとき
あながちに哀しきものをみつめたる我にしもあらぬを
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