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2021/12/28

萩原朔太郞詩集「蝶を夢む」正規表現版 懺悔

 

   懺 悔

 

あるみにうむの薄き紙片に

すべての言葉はしるされたり

ゆきぐもる空のかなたに罪びとひとり

ひねもす齒がみなし

いまはやいのち凍らんとするぞかし。

ま冬を光る松が枝に

懺悔のひとの姿あり。

 

[やぶちゃん注:初出は大正四(一九一五)年三月号『地上巡禮』。但し、標題は「姿」。以下に初出形を示す。太字は底本(筑摩版全集)では傍点「ヽ」。誤字(「扁」)はママ。

   *

 

 姿

 

あるみにうむの薄き紙片に、

すべての言葉はしるされたり、

ゆきぐもる空のかなたに罪びとひとり、

ひねもす切齒なし、

いまはや生命こほらむとするぞかし。

ま冬を光る松が枝に

懺悔のひとの姿あり。

           ――淨罪詩扁――

 

   *

「切齒」(せつし(せっし))には「歯を喰いしばること」の意がある。

 なお、同全集の「草稿詩篇 蝶に夢む」には、本篇の草稿三種の内から二種が活字化されてあるので(孰れも無題)、以下に示す。歴史的仮名遣の誤りや誤字(「寅」は同全集は「宙」の誤字とする)や脱字らしき部分はママ。太字は同前。

   *

 

  

 

あきらかなるものあらはれぬ

せる罪をしるせる紙片に

かゞやく銀→黃ろき罪のあるみにうむの光る薄き紙片に

すべてのことばはしるされたり

ああ汝のもし齒をやぶらば

齒より汝の骨をけづれば

骨は粉末して樹上にふらん

齒は寅に 光り 現じ

そもそも汝の手よりして發せるもの

幽にあらはれ

汝の骨肉をやぶらば肉にあらはれ

れきれきとして骨にもけづられ

犯せる罪のしるし四方にあはれしぞいづ

 

 

  

 

あきらかなるのあらはれぬ

あるみにうむの薄き紙片に

懺悔の姿いちぢるく

すべてのことばはしるされたり

そのひとのれきれきとして齒もあらはれ

額にあらはれ

骨にきざまれ

天にあらはれ

しるしは木々にあらはれ

 

   *

とあり、最後に編者注があって、『本稿は『月に吠える』の草稿詩篇「冬」と同じ用紙に書かれており、發想は同時で後にそれぞれ獨立したものと思われる』とあり、さらに本草稿について、『別稿には題名を「罪人姿」とし、末尾に「――淨罪詩扁〔篇〕」とある』とある。「月に吠える」の決定稿「冬」は『萩原朔太郎詩集「月に吠える」正規表現版 冬』を見られたい。正規表現版では草稿は電子化していないが、今回、追加する形でそちらの注に追加しておいたので、これも見られたい。]

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