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2021/12/13

萩原朔太郎詩集 遺珠 小學館刊 遺珠 「冬」・「貘」

 

  

     『月に吠える』收載

 

つみとがのしるし天にあらはれ

ふりつむ雪のうへにあらはれ

木木の梢にかがやきいで

ま冬をこえて光るがに

おかせる罪のしるしよもに現はれぬ。

みよや眠れる

くらき土壤にいきものは

懴悔の家をぞ建てそめし。

 

[やぶちゃん注:「『月に吠える』收載」の添え辞は編者によるもの。但し、これは表記上大きな問題がある。まず、致命的なのは、「おかせる罪のしるしよもに現はれぬ。」の後、「みよや眠れる」の前に一行空けがないことである。また、感情詩社・白日社出版部共刊になる自費出版の「月に吠える」初版では、一行目から四行目及び六・七行目末に読点が打たれている点でも異なる(但し、大正一一(一九二二)年三月アルス刊の「月に吠える」の再版・昭和三(一九二八)年三月第一書房刊の「萩原朔太郞詩集」・昭和四(一九二九)年十月新潮社刊の「現代詩人全集」第九巻「萩原朔太郞集」・昭和一一(一九三六)年新潮社(同文庫収載)刊の「萩原朔太郞集」では、以上の読点が総て除去されてはいる)。私の「萩原朔太郎詩集「月に吠える」正規表現版 冬」を見られたい。]

 

 

 

  

    『地上巡禮』大正四年三月號(「冬」原型)

 

あきらかなるもの現れぬ

つみとがのしるし天にあらはれ

懺悔のひとの肩にあらはれ

骨に現はれ

木木の梢に現はれいで

眞冬をこえて凍るがに

犯せる罪のしるしよもにあらはれぬ。

               (淨罪詩篇)

 

[やぶちゃん注:「『地上巡禮』大正四年三月號(「冬」原型)」の添え辞は編者によるもの。但し、これも読点排除以外に致命的な大きな誤り――一行脱落――がある。前掲正規表現版に電子化しているが、以下に示す。

   *

 

  

 

あきらかなるもの現れぬ、

つみとがのしるし天にあらはれ、

懺悔のひとの肩にあらはれ、

齒に現はれ、

骨に現はれ、

木木の梢に現はれ出で、

眞冬をこえて凍るがに、

犯せる罪のしるしよもにあらはれぬ。

             ――淨罪詩扁――

 

   *

「扁」は朔太郎の、この時期の偏執的な「篇」の誤字。読点除去は目を瞑っても、「齒に現はれ、」の脱落はひどい。極めて残念である。

 なお、本篇には、他に三種の草稿(無題一篇・「所現」・「家」)とが存在する。筑摩版全集の「草稿詩篇 月に吠える」より引用する。

   *

 

  

 

つみとがのしるし天にあらはれ

みよ懺悔のいのれるひとの姿にあらはれ

つみとがのしるし天にあらはれ

樹々の梢にあらはれ

光れる雪

れきれきとしてその齒にあらはれきざまれ

骨にあらはれきざまれ

樹にきざまれ

しるしは天にあらはれぬ

樹々の梢にあらはれいで

ま冬めぢのかぎり

さもしろしろを雪ふりつもり

ま冬を越えていちめんに

犯せる罪のしるし四方にあらはれぬ、

 

[やぶちゃん注:「さもしろしろを雪ふりつもり」の「を」はママ。「と」の誤記であろう。]

 

   *

 

  罪罰

  所現

 

あきらかなるもの現れぬ

つみとがのしるし天にあらはれ

懺悔のひとの肩にあらはれ

幽にあらはれ

骨にあらはれ

木々のゆきふるなべにしらしらと

木々の梢にあらはれいで

あるみにうむの薄き紙片に

すべての言葉はしるされたり

ま冬をこゑていちめ雪ぞらに凍るがに

犯せる罪のしるしよもにあらはれぬ

              ――淨罪詩扁

 

[やぶちゃん注:「ま冬をこゑていちめ雪ぞらに凍るがに」の「こゑて」の「ゑ」、「いちめ」はママ。後者は「いちめん」の脱字であろう。「扁」はママ。]

 

   *

 

  

 

つみとがのしるし空にあらはれ

ふりつむゆきのうへにあらはれ

凍れる魚の淮にもあらはれ

木木の梢にあらはれかがやきいで

ま冬をこえて光るがに

犯せる罪のしるしよもにあらはれぬ。

 

みよや眠れる

くらき土壞にいきものは

懺悔の家をぞ建てそめし。

 

[やぶちゃん注:「土壞」はママ。「土壤」の誤字であろう。この最後詩篇には、編者注があり、『「家」は雜誌發表(題名「貘」)から詩集刊行までの間に書かれた淸書原稿と推定される。』とある。]

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