萩原朔太郞詩集「蝶を夢む」正規表現版 閑雅な食慾
閑雅な食慾
松林の中を步いて
あかるい氣分の珈琲店(かふえ)をみた
遠く市街を離れたところで
だれも訪づれてくるひとさへなく
松間の かくされた 追憶の 夢の中の珈琲店(かふえ)である。
をとめは戀々の羞をふくんで
あけぼののやうに爽快な 別製の皿を運んでくる仕組
私はゆつたりとふほくを取つて
おむれつ ふらいの類を喰べた
空には白い雲がうかんで
たいそう閑雅な食慾である。
[やぶちゃん注:「靑猫」からの再録。最後の三行が、
*
おむれつ ふらいの類を喰べた。
空には白い雲がうかんで
たいさう閑雅な食慾である。
*
と表記が異なるだけである。「萩原朔太郞 靑猫(初版・正規表現版) 閑雅な食慾」を見られたい。そちらで語注も施してある。]
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