萩原朔太郞詩集「蝶を夢む」正規表現版 龜
龜
林あり
沼あり
蒼天あり
ひとの手には重みをかんじ
しづかに純金の龜ねむる
この光る
さびしき自然のいたみにたえ
ひとの心靈(こゝろ)にまさぐりしづむ
龜は蒼天のふかみにしづむ。
[やぶちゃん注:七行目末の「たえ」はママ。「月に吠える」より再録。『萩原朔太郎詩集「月に吠える」正規表現版 龜』と対照されたいが、「たへ」は元版では正しく「たえ」で、四行目の「重みをかんじ」、七行目冒頭「さびしき」がそれぞれ、元版では「おもみを感じ」、「寂しき」となっている。再録では以上の表記換え以外に、初版にあった四行目と句点の終行を除いて打たれてあった読点が総て除去されてあるのだが、実はこの読点除去の形は「月に吠える」再版(初版刊行の五年後の大正一一(一九二二)年三月アルス刊)の表記と一致するので、実際の手入れは四行目・七行目の表記換えだけである。]
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