萩原朔太郞詩集「蝶を夢む」正規表現版 有害なる動物
有害なる動物
犬のごときものは吠えることにより
鵞鳥のごときものは畸形兒なることにより
狐のごときものは夜間に於て發光することにより
龜のごときものは凝晶することにより
狼のごときものは疾行することによりてさらに甚だしく
すべて此等のものは人身の健康に有害なり。
[やぶちゃん注:まるで、中国の古い博物誌・本草書・伝奇小説・志怪小説か、プリニウスの「博物誌」を読むようで、偏頗にして差別的・非科学的であるが、さればこそ、古典的博物学の面目の復活又は精神分析的或いは民俗学的に甚だ興味深い(正直、問題があるが面白い)一篇である。初出は大正四(一九一五)年一月号『水甕』。以下に示す。
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有害なる動物
犬のごときものは吠ゆることにより、
鵞鳥のごときものは畸形兒なることにより、
狐のごときものは夜間に於て發光することにより、
龜のごときものは凝晶することにより、
狼のごときものは疾行することによりて更に甚だしく、
すべて此等のものは人身の健康に有害なり。
――十二月作――
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草稿も一篇ある。以下に示す。誤字や脱字と思われるものは総てママ。
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有害なる動物
たとへば犬のごときものはその吠ゆることによりて
雲雀の如きものはつばさのニツケルなるを以て
魚の如きものはその泳ぐことにより
鵞鳥のごときものは遠方 綺形*その怪異なることによりて//その不具キ形兒なることより*
[やぶちゃん注:「*」「//」は私が附した。「その怪異なることによりて」と「その不具キ形兒なることより」が並列残存していることを示す。]
鴨
狐のごときものは夜間に及びその肢體の光れることによりて
疾行する狼のごときものは就中有害なり。よく疾行することによりて最も甚だし、
就中すべてこれらのもの人身われの建康に有害なり、
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しかしだな、朔太郎よ、判っているよな? 自然界に於いて宇宙の中で最も致命的絶望的非望的に「有害なる動物」は――無論、人間だよ――]
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