萩原朔太郎詩集 遺珠 小學館刊 斷片 手の肖像
手 の 肖 像
手の肖像をかけしめよ
壁の四方にかけしめよ
生ぬるき血はめんめんと
黑き窓よりながれたり。
[やぶちゃん注:筑摩版全集の「未發表詩篇」に同題で以下のようにある。
*
手の肖像
手の肖像をかけしめよ
壁の四方にかけしめよ
生ぬるき血はめんめんと
家根
額 家の
黑き家根の 家をば窓よりながれたり、
*
なお、同全集の『草稿詩篇「未發表詩篇」』には本篇の草稿(無題)が載る。以下に示す。歴史的仮名遣の誤りや誤字・脱字・削除は総てママである。
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○
手には手の肖像
足には足の肖像
しんしんめんめんと雪ふりつもり、
罪びとの姿しらたヘ
喰べたくなりぬ
ああ喰べたくなりぬ
不可思議なる 哉 かな
われの かつは手をして磨かしめ
いよいよ光 り れば
樹上 に で
そのわが胃袋はいよいよ靑く
手は身もたましひはふるへながらに乞食に透見せり
きらびやかなる
空屋の
懺悔の淚にくるゝとき
恐ろしきものゝ來れるまヘ
なにかしらねど
細くして
*]
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