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2021/12/29

萩原朔太郞詩集「蝶を夢む」正規表現版 綠蔭俱樂部

 

   綠蔭俱樂部

 

都のみどりば瞳(ひとみ)にいたく

綠蔭俱樂部の行樂は

ちまたに銀をはしらしむ

五月はじめの朝まだき

街樹の下に並びたる

わがともがらの一列は

はまきたばこの魔醉より

襟脚きよき娘らをいだきしむ。

綠蔭俱樂部の行樂の

その背廣はいちやうにうす靑く

みよや都のひとびとは

手に手に白き皿を捧げもち

しづしづとはや遠近(をちこち)を行きかへり

綠蔭俱樂部の會長の

遠き畫廊を渡り行くとき。

 

[やぶちゃん注:「綠蔭俱樂部」なる怪しげにして在雑なものの実態は不詳。初出は大正三(一九一四)年六月号『詩歌』。以下に示す。二行目の誤植はママ。

   *

 

 綠蔭俱樂部

 

都のみどりば瞳(ひとみ)にいたく、

綠蔭俱榮部の行樂は、

ちまたに銀をはしらしむ、

五月上旬(はじめ)のあさまだき、

街樹の下に並びたる、

わがともがらの一列は、

はまきたばこの魔醉より、

襟脚きよき娘らをいだきしむ、

みないつしんにいだきしむ。

綠蔭俱樂部の行樂の、

その背廣はいちやうにうす靑く、

みよや都のひとびとは、

手に手に白き皿を捧げもち、

しづしづとはや遠近(をちこち)を行きかへり、

綠蔭俱樂部の會長の、

遠き𤲿廊を渡り行くとき。

 

   *

本篇のクライマックスの「襟脚きよき娘らをいだきしむ、」の後に強調の「みないつしんにいだきしむ。」の一行が挟まれてあり、これが反転のバネとなって上手く働いて、詩想のクレッシェンドが静かにデクレッシェンドへと転じており、私はこの初出形の方がよいと感じている。

 なお、筑摩版全集の『草稿詩篇 蝶を夢む』の最後には、『綠蔭俱樂部(本篇原稿一種一枚』としつつも、掲げずに、『末尾に「(大正三年五月一日)」と附記されている』とのみ記す。但し、同全集の『一九一三、九 習作集第九卷』には、以下の草稿が載る。

   *

 

 綠蔭俱樂部

都のみどりば瞳(ひとみ)にいたく

綠蔭俱榮部の行樂は

ちまたに銀をはしらしむ

五月はじめの朝まだき

街樹の下に並びたる

わが友がらの一列は

襟脚しろき娘らをいだきしむ

みないつしんにいだきしむ。

綠蔭俱樂部の行樂の

その背廣はいちようにうす靑く

みよや都のひとびとは、

手に手に白き皿を捧げもち

しづしづとはや遠近を步みいづ、

綠蔭俱樂部の會長の

遠き畫廊をすぐるときしも。

             (大正三年五月一日)

 

   *]

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