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2021/12/14

萩原朔太郎詩集 遺珠 小學館刊 遺珠 「動物園にて」(決定稿と初出)

 

   動 物 園 に て

      『氷島』收載

 

灼きつく如く寂しさ迫り

ひとり來りて園内の木立を行けば

枯葉みな地に落ち

猛獸は檻の中に憂ひ眠れり。

彼等みな忍從して

人の投げあたへる肉を食らひ

本能の蒼き瞳孔に

鐵鎖のつながれたる惱みをたえたり。

暗鬱なる日かな!

わがこの園内に來れることは

彼等の動物を見るに非ず

われは心の檻に閉ぢられたる

飢餓の苦しみを忍び怒れり。

百たびも牙を鳴らして

われの欲情するものを嚙みつきつつ

さびしき復讐を戰ひしかな!

いま秋の日は暮れ行かむとし

風は人氣なき小徑に散らばひ吹けど

ああ我れは尙鳥の如く

無限の寂寥をも飛ばざるべし。

 

[「たえたり」はママ(以下の初出の「耐えん」も同じ)。若干、問題がある。私の「萩原朔太郎 氷島 初版本原拠版 附・初出形 動物園にて」を参照されたいが、「瞳孔」にあるルビ「ひとみ」がなく、「暗鬱」は「暗欝」である。後者は筑摩版全集では「暗鬱」に消毒されているが、「国文学研究資料館」の「電子資料館」の「近代書誌・近代画像データベース」の原本本篇を見て戴ければ判る通り、「暗欝」が正しい。]

 

 

 

  動 物 園 に て

     『ニヒル』昭和五年二月號(「動物園にて」原型)。

 

灼きつく如く寂しさ迫り

一人來りて園内の木立を行けり。

枯葉みな地に落ち

猛獸は檻の中に憂ひ眠れり。

彼等みな忍從して

人の投げあたへる肉を喰らひ

本能の蒼き瞳(ひとみ)に

鐵鎖のつながれたる惱みをたへたり。

暗鬱なる日かな

わがこの園内に來れることは

彼等の動物を見るに非ず

いかんぞこの悲しきものを見るに耐へん。

われは心の檻に閉ぢられたる

飢餓の苦しみを忍び怒れり

いかんぞこの悲しきものを見るに耐へん。

百たびも牙を鳴らして

われの欲情するものを嚙み付きつつ

さびしき復讐を戰ひしかな。

今秋の日は暮れ行かんとし

風は人氣なき小徑に散りばひ吹けり。

ああその思惟を斷絕せよ

われは尙鳥の如く

無限の寂寥をも飛ばざるべし。

 

[やぶちゃん注:これは致命的な誤りがある。私の「萩原朔太郎 氷島 初版本原拠版 附・初出形 動物園にて」を参照されたいが、「飢餓の苦しみを忍び怒れり」の次行の「いかんぞこの悲しきものを見るに耐へん。」は一行分全部が衍字句である。

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