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2021/12/06

曲亭馬琴「兎園小説外集」第二 筑後柳川風流祭再考圖說 海棠庵

   ○筑後柳川風流祭再考圖說

筑後

  流祭所用獅子頭

梁川

風流祭の紀事は、予、嚮に「兎園小說」中に出せしに、今春、又、この獅子頭を得たれば、ふたゝび諸賢の淸鑒に具ふ。幷「西國諸家盛衰記」に載する所の事、この祭の起原にやとおもふによりて、抄寫して、かの闕を補ふもの、左の如し。

「西國諸家盛衰記」第九

      宗麟風流躍見物事

 

Huryuumaturisisigasira

 

[やぶちゃん注:底本の国立国会図書館デジタルコレクションの画像をトリミング補正して示した。指示線が含まれているので、キャプションも総て採った。キャプションは、上部に、

獅子の頭も、すべて、紅・白・靑・黃の紙を、細かに切りて、作りしもの也。但、眼は銀紙をもて、つくれり。

とあり、判読が厳しいが、両の耳の表面には、それぞれ、

銀紙

と書かれてあり、中央の折り紙(これが獅子の上下の顎)の間から覗いている、円形の前部に、

舌。紅紙。

と右から左に書かれてある。また、右下方に指示線が真横に伸びて(底本は非常に薄い。吉川弘文館随筆大成版を参考に細く直線を加えた)、

すべて、靑・黃・赤・白の紙を、網のごとくに切りしもの也。

とあって、中央より右手下方にも、斜めの指示線を添えて、

このひもハ、紅・靑、結交ニ。

とある。「結交ニ」は「ゆひかへに」或いは「むすびまじへに」で、二色の紐を綯ってあることを言っているのであろう。因みに、この獅子頭、今なら、「チョー! 可愛いイイ!」とか、勘違いされて、大受けしそうなキャラ的感じさえするわい。]

 

同七月【天正二年[やぶちゃん注:一五七五年。]。】大友入道宗麟、六人の老臣に、「風流の躍見物すべし。」と宣ひければ、六人の輩、思ひ思ひに、風流を盡し、其用意をなしけるが、同き二十七日、丹生島[やぶちゃん注:「にうじま」。現在の大分県臼杵市臼杵丹生島(グーグル・マップ・データ)。現在は干拓によって完全に陸地となっているが、元は臼杵川河口右岸にあった阿蘇山の溶岩流によって形成された陸繋島で、最高地点は十七メートル。永禄年間(一五五八年~一五七〇年)に宗麟が築城した。]の城中にて、見物ある。一番は佐伯紀伊介維敎。風流は「小原木」[やぶちゃん注:「おはらぎ」か。京近郊の大原で産出し、大原女が京都に売りに来た、黒く蒸した薪(たきぎ)が原義。]と號し、躍子共、一樣に、女の出立にて、肌には朽葉の練を着し、上の小袖を脫かけ、白きくゝり帽子の端を、長く下げ、金欄の前垂をし、「小原木」を金にして、櫻の作り花の枝に、眞紅の繩にて結付け、是を持。其謠、一曲を聞けば、

 〽小原木々々々、召せや、召せ、召せ、小原靜原芹生の里、朧の淸水の陰は、八瀨の里しらず、櫻の匂ふや、此里の春風、

 〽松がさき散る花までも、雪は殘りて春寒し、小原木召れよ、小原木召れ候へ、

と、聲、面白く、謠、躍る。中躍[やぶちゃん注:「なかをどり」。]も、金の「小原木」を戴き、又は、荷ひ、躍、舞ふ。傘鉾の内にては、笛・鼓・鐘・太鼓にて、是を囃

す。二番は田原近江入道紹忍、躍は「芭蕉躍」と號し、躍子共、箔の小袖を着、金熨斗付の大脇指を指、萠黃の片色の緖にて、芭蕉を作り、切り破りて、持躍る。中躍は、芭蕉の葉を、萠黃の段子[やぶちゃん注:「どんす」。]を以、まきて、是を作り持てり。三番は田北相摸守鎭周[やぶちゃん注:「しげかね」。]、風流は「碇かつぎ」と名づけ、一番に船を作り、金欄にてつゝみ、車に乘せて引出る。次に躍子共、箔の小袖に、紅の糸の腰簑し、碇を金欄にてつゝみて、是を持つ。中躍も碇を持、其小謠にm

 〽綠樹陰、しづかにて、しづかにて、魚、木に登る風情あり、月、海上に浮んでは、兎も波を走るなり、面白の春ベや、荒、面白の浦の氣色や、

と、聲を揃て、躍、謠ふ。四番は朽網三河守鑑康、躍は「斑女」[やぶちゃん注:「はんじよ」。]と號して、躍子共、女の出立にて、箔の小袖を着、上を脫かけて、くゝり帽子を戴き、竹の純金を以、つゝみ、傘扇を付る。中躍も是に同じ。五番は吉岡鑑直[やぶちゃん注:「あきなほ」。]、躍は「葛城」と名づけ、躍子共、箔の小袖を着、扇笠の上に雪を作り、戴き、躍る。中躍も、大なる作り雪を持出て、雪を打破り、金銀の箔を散して、舞ひ、謠ふ。六番は志賀伊豫入道道輝、風流は「井筒」と號して、井筒を作り、柱を立、桔樟(はねつるべ)をしかけ、桶をば、金欄にて、つゝみ、眞紅の繩にて、是を下げ、一方の重りの沈[やぶちゃん注:沈香木か。]の榾を付け、側に火鉢を置、沈を刻て[やぶちゃん注:「きざみて」。]、是を燒、躍子は、くゝり帽子を着、桶を金欄にてつゝみ、金の棹にて是を持。中躍も斯のごとし。上下、心も空にうかれ、感聲、暫も、止み間、なし。宗麟、悅喜、甚しく、「其返し。」として「吉野靜」の能、一番あり。太夫は金春太夫なり。警固の士、五、六十人、甲冑を帶し、長の鞘を、金欄の折形にて、是をつゝみ、能の間、警固せり。御曹司新太郞義統[やぶちゃん注:「よしむね」。]より、返しは、「三輪」の躍りなり。眞中に三間ばかりの金幣[やぶちゃん注:「こがねのぬさ」と訓じておく。]を立、躍子共も金幣を持、躍て、其日の遊興は終りけり。

 これによれば、今の風流躍も、この遣風の、田間にのこれるなるべし。

[やぶちゃん注:庵点は鍵括弧を私の趣味で代えたもの。]

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