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2021/12/29

萩原朔太郞詩集「蝶を夢む」正規表現版 空に光る

 

   空 に 光 る

 

わが哀傷のはげしき日

するどく齲齒(むしば)を拔きたるに

この齲齒は昇天し

たちまち高原の上にうかびいで

ひねもす怒りに輝やけり。

みよくもり日の空にあり

わが瞳(め)にいたき

とき金色(こんじき)のちさき蟲

中空に光りくるめけり。

 

[やぶちゃん注:「齲齒」の音は正しくは「くし」と読む。「うし」と読むことが多いが、「う」は慣用音で本当は誤りである。まあ、「むしば」と読んでしまっているから、いいけれど、個人的には「むしば」という読みは本詩篇の詩想から見ると、『何だかな~』っていう感じが私はしてならないのだが。

「とき金色(こんじき)のちさき蟲」の「とき」は、前の「わが瞳(め)にいたき」を受けるから、「利き」「鋭き」で、「ちさき蟲」の形容。

初出は大正三(一九一四)年六月号『詩歌』。以下に示す。

   *

 

 空に光る

 

わが哀傷の烈しき日、

するどく齲齒を拔きたるに、

この齲齒は登天し、

たちまち高原の上に浮びいで、

ひねもす怒りに輝やけり。

みよ、くもり日の空にあり、

わが瞳(め)にいたき、

とき金色(こんじき)のちさき蟲

中空に光りくるめけり。

 

   *

本篇には筑摩版全集の『習作集題九卷』に草稿が一つある。標題は「光る齲齒」。

   *

 

  光る齲齒

 

わが哀傷の烈しき日

するどく齲齒を拔きたるに

この齲齒は登天し

たちまち高原の上に浮びいで(懸りて)

ひねもす怒りにかゞやけり

見よくもり日の空にあり

わが眼にいたき

とき金色の小さき蟲

中空に光りくるめけり。

 

   *]

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