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2022/01/20

毛利梅園「梅園介譜」 水蟲類 江蝦(ケンヱビ)前後二圖 / ハコエビ

 

Hakoebif

 

Hakoebib

 

江蝦【「けんゑび」・「鬼ゑび」・「かぶとゑび」。】

 

江蝦、其の身・殻、龍蝦(いせえび)に非(あらざ)るに、尤も堅く、たくましく、脊、三稜(さんりやう)にして、劔(つるぎ)の脊のごとく、形、蝦姑(しやこ)に似て、鬣(ひれ)なく、角(つの)の長さ、尺に至る。角、各々(おのおの)二つに合(がつ)せるがごとく、幷(なら)びつけり。身の長さ、尺に至る。魚戶(うをと/さかなや)、「鎌倉ゑび」と呼ぶは、非なり。「かまくら蝦」は龍蝦(イセヱビ[やぶちゃん注:左ルビ。])なり。此の者、其の腹裏、口の上に女面(をみなのめん)をあらはす。後の圖を見るべし。

 

乙未(きのとひつじ)十月廿八日、倉橋氏より、之れを送るを、眞寫す。

 

[やぶちゃん注:以上、底本の国立国会図書館デジタルコレクションのこちらの背部からの描写図見開き丁の解説。以下は次の見開き丁の腹部側の図のキャプション。]

 

   同 腹 之 圖

 

[やぶちゃん注:この素晴らしい図は、

十脚目イセエビ下目イセエビ科ハコエビ属ハコエビ Linuparus trigonus (Von Siebolt,1824)

である。「ぼうずコンニャクの市場魚類図鑑」のハコエビのページを見られたい。それによれば、全長九十センチメートルを超える大型のエビとある(但し、後に掲げる他の記載でも、そんなに大きくはない。これは触角に先端からの長さであろう。そもそも大型のイセエビでも実体長四十センチメートルを超える個体はちょっと聴かないから)。頭胸部は箱形で(それが和名「箱蝦」の由来。学名命名は、ご覧の通り、オランダ人と偽って来日潜入した、かのドイツ人医師で博物学者のフィリップ・フランツ・バルタザール・フォン・シーボルト(Philipp Franz Balthasar von Siebold 一七九六年〜一八六六年)で、模式標本を持ち帰って新種記載した)、触角が太く、棒状を成す。分布は千葉県・島根県から九州。黄海・東シナ海・アフリカ東岸・オーストラリア東南岸。先に出たイセエビが、岩礁性海岸に多いのに対し、本種は水深七十メートルから百二十メートルの砂泥地に棲んでいる。ぼうずコンニャク氏によれば、『主に産地周辺で消費されている』。『刺し網、底曳き網などでとれるもので、イセエビよりも水っぽいとされ、評価が低い』とあり、『市場での評価』は『入荷は希。あまり高値とはならなかったが、珍しさもあって時に高値となることも』あるとあり、刺し網・底曳き網で漁獲されるとある。産地は静岡県・長崎県・宮崎県。『甲羅は厚みがあり、エビよりもカニを思わせる』が、『歩留まりは悪』く、『みそは少なく、身は水分が多いものの』、『ボリュームがある』とあり、『イセエビと比べると』、『ゆでて』も『弾力がなく、旨みがやや少なく感じる。熱を通すと締まって硬くなる』とある。また、『国産ハコエビには』近縁種の『オキナハコエビ』Linuparus sordidus も『知られる』とある(オキナワハコエビは「沖縄美ら海水族館」公式サイト内の「美ら海生き物図鑑」に(写真有り)、二〇〇三年に『うるま市沖から国内初記録となる個体が採集され、体全体が白いことから』、『新和名オキナハコエビの名が付けられた。ハコエビに比べ、やや深い水深約』四百~六百五十メートルからの『採集の記録がある。通常のハコエビとは、体色が白っぽいことや、第』二『触角が短いことなどから』、『容易に』識別出来るとあった)。

 次に当該ウィキを見る。『温暖で』、『やや深い海の砂泥底に生息し、食用にもなる大型種である。方言呼称としてゾウエビ(象海老)、ドロエビ(泥海老)などもある』。『成体の体長は』三十~四十センチメートル『ほどで、イセエビに匹敵する大型種である。甲は堅く、全面に小顆粒があり、つやがない。外見はイセエビにも似るが、イセエビに比べて棘や突起は少ない。頭胸甲の中ほどに頸溝があって、前後が明らかに仕切られる。頸溝より後ろでは背面中央と左右に計』三『本の稜(キール)が走り、体の断面が五角形をなす。腹部の各節には』一『本の横溝があるが、後半の第』四から第六『腹節では背面中央の稜線で中断される。体色はほぼ赤褐色だが、生体の甲の縁や関節部は黄白色で縁取られる』。『第』二『触角は扁平で先が尖り、体長と同じくらいの長さがある。イセエビ科は第』二『触角つけ根の関節から触角を後方に曲げられるのが普通だが、ハコエビ属は触角を後方に曲げられず、常に前方に突き出している。第』二『触角の間に細く短い第』一『触角がある。また、メスは第』五『歩脚の先端に小さな鉗をもつ』。『属名 Linuparus は、イセエビ属 Panulirus と同様にヨーロッパイセエビ属 Palinurus のアナグラムである。種小名 trigonusは「三つの角を持つ」という意味で背面の』三『稜に因み、和名もまた』、『その角張った体型が箱を想起させることに由来する。英名の一つ』である“Japanese spear lobster”は、『前に突き出た触角を槍に見立てたものである』。『アフリカ東岸から日本、ハワイ、オーストラリアまで、インド洋と西太平洋の熱帯・亜熱帯海域に広く分布する。日本では島根県・千葉県以西の沿岸域に分布する』。水深二十メートルから三百メートル『ほどのやや深い海の砂泥底に生息するが、日本近海では水深』七十~百二十メートル附近に『多い』。『日本では刺し網や底引き網などで漁獲され』、『食用になるが、イセエビやウチワエビほどの漁獲量はなく、市場に出回ることは少ない』。以下、ハコエビ属には四種が属するとして、前掲のオキナハコエビを含む学名が掲げられてある。なお、他に「旬の食材百科」の「ハコエビ Linuparus trigonus:生態や特徴と産地や旬」(学名が斜体でないのはママ)も画像が豊富で(別ページにも纏まってある)、一見に価値がある。先のウィキで述べている触角を後方に曲げることが出来ない物理的構造が拡大写真でよく判る。

「江蝦」の出所は不詳。「漢籍リポジトリ」で検索しても、二冊しか出てこない。検索結果では中文サイトに「江蝦」があるが、これは「川えび」の、先に候補としたヌマエビの類のようで(検索結果で「不審サイト」扱いなので、接続していないので、「日本沼蝦」という並列された文字列から推測)、どうも本種にこれを当てのは漢籍由来ではないようである。

「けんゑび」「劔海老」。

「かぶとゑび」「甲冑海老」。「兜海老」。

「其の腹裏、口の上に女面(をみなのめん)をあらはす。後の圖を見るべし。」この最後の「乎」は強意の助字と採り、「か」とは読まないことにした。所謂、すっかり流行らなくなった心霊写真と同じシミュラクラ現象(simulacrum)である。一応、私は、頭部を上にした状態で見えるような気がする。底本から最大でダウン・ロードしてトリミングしたものを掲げておく。違う方には、別に見えるかも知れないので、頭部を下にした画像も並べておく。

 

Hukubu1

 

Hukubu2

 

「乙未十月廿八日」天保六年十月二十八日はグレゴリオ暦一八三五年十二月十七日。

「倉橋氏」本カテゴリで最初に電子化した『カテゴリ 毛利梅園「梅園介譜」 始動 / 鸚鵡螺』に出る、梅園にオウムガイの殻を見せて呉れた「倉橋尚勝」であるが、今回、彼は梅園の同僚で幕臣(百俵・御書院番)であることが、国立国会図書館デジタルコレクションの磯野直秀先生の論文「『梅園図譜』とその周辺」(PDF)で判明した。]

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