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2022/01/12

第一書房版「萩原朔太郞詩集」(初収録詩篇二十一篇分その他)正規表現版 「靑猫(以後)」 駱駝

 

駱 駝

 

さびしい光線のさしてる道を

わたしは駱駝のやうに步いてゐよう。

すつぱい女どもの愛からのがれて

なにかの職業でもさがしてみよう。

どことも知らない

遠くの交易市場の方へ出かけて行つて

馬具や農具の古ぼけたあきなひでも眺めてゐよう。

さうして砂原へ天幕(てんと)を張り

懶惰(らんだ)な日にやけた手足をのばして

やくざな人足どもと賭博(ばくち)をやらう。

 

[やぶちゃん注:「沼澤地方」と同じく「懶惰」の「懶」は(つくり)が「頼」の字になった異体字(「グリフウィキ」のこれ)であるが、表示出来ないので「懶」とした。本詩集の奥附を見ると、印刷は印刷所ではなく、「印刷者」とあって「萩原芳雄」という個人名になっている。或いは第一書房社内に独自の印刷部が併置されてあり、その担当者なのかも知れない。而してその印刷工房の植字の「懶」は、もともとこの異体字活字しかなかった(活字屋に頼んで作らせた際に、この字体でしか発注していなかった)可能性がある。因みに、この豪華な製本も「製本者」として個人名で「橋本久吉」とある。或いは第一書房は出版冊数が少ない場合や、製本が面倒なものの場合などでは、纏めて製本・印刷を頼むのではなく、社内で総てをまかなう方法を採っていたのかも知れない。試みに調べてみると、かの知られた堀口大學の約詩集「新編月下の一群」(昭和三(一九二八)年版)も第一書房だが、「国文学研究資料館」の「近代書誌・近代画像データベース」の同書の書誌データを見ると、印刷のところに「単式印刷」とあり、これは印刷所の名前らしくなく、また、「製本者 橋本久吉」とあり、さらに、国立音楽大学附属図書館の二〇一四年の企画展「日本の音楽家の美しい本」のパンフ・データPDF)の3コマ目に「出版者●第一書房」のパートがあるが、そこでは昭和五(一九三〇)年六月から昭和八年十月までの条に出る六冊は総てが印刷・製本がこの二人の名になっているのである。因みに、そのパートのところに同社についての解説があり、社長『長谷川巳之吉』が大正一二(一九二三)年に『創業。採算を度外視した美しい装幀の本を出版する。そのため、度々資金難に』もなったとあり、めげずに『文芸、芸術関連の書籍、特に全集叢書を刊行』したとあり、『しかし、戦時下の出版統制に嫌気が差し、昭和』一九(一九四四)『年に廃業』とあった。

 初出は大正一三(一九二四)年九月号『改造』。以下に示す。「ゐやう」(二箇所)「みやう」「やろう」はママ。

   *

 

 駱駝

 

さびしい光線のさしてる道を

わたしは駱駝のやうに步いてゐやう。

すつぱい女どもの愛からのがれて

なにかの職業でもさがしてみやう。

どことも知らない

遠くの交易市塲の方へ出かけて行つて

馬具や農具の古ぼけたあきなひでも眺めてゐやう。

さうして砂原へ天幕(てんと)を張り

懶惰な日にやけた手足をのばして

やくざな人足どもと賭博(ばくち)をやろう。

 

   *]

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