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2022/01/09

第一書房版「萩原朔太郞詩集」(初収録詩篇二十一篇分その他)正規表現版 「靑猫(以後)」 古風な博覽會

 

古風な博覽會

 

かなしく ぼんやりとした光線のさすところで

圓頂塔(どうむ)の上に圓頂塔(どうむ)が重なり

それが遠い山脈の方まで續いてゐるではないか。

なんたるさびしげな靑空だらう。

透き通つた硝子張りの虛空の下で

あまたのふしぎなる建築が格鬪し

建築の腕と腕とが組み合つてゐる。

このしづかなる博覽會の景色の中を

かしこに遠く 正門を過ぎて人人の影は空にちらばふ。

なんたる夢のやうな群集だらう。

そこでは文明のふしぎなる幻燈機械や

天體旅行の奇妙なる見世物をのぞき步く

さうして西曆千八百十年頃の佛國巴里市を見せるパノラマ館の裏口から

人の知らない祕密の拔穴「時」の胎内へもぐり込んだ。

ああ この消亡をだれが知るか?

圓頂塔(どうむ)の上に圓頂塔(どうむ)が重なり

無限にはるかなる地平の空で

日ざしは悲しげにただよつてゐる。

 

[やぶちゃん注:ロケーションである「パノラマ館」については、私の古い(ここの一部の漢字の正字不全は先ほど修正した)「パノラマ館にて (「宿命」版)」の本文及び注で示した萩原朔太郎の「自註」と、その後の私の補足注を参照されたい。

 初出は大正一二(一九二三)年一月号『文章世界』。以下に示す。「のぞく步く」はママ。誤植であろう。

   *

 

 古風な博覽會

 

かなしく ぼんやりとした光線のさすところで

圓頂塔(どうむ)の上に圓頂塔(どうむ)が重なり

それが遠い山脈の方まで續いてゐるではないか

なんたるさびしげな靑空だらう

透き通つた硝子張りの虛空の下で

あまたのふしぎなる建築が格鬪し

建築の腕と腕とが組み合つてゐる

このしづかなる博覽會の景色の中を

かしこに遠く 正門を過ぎて人人の影は空にちらばふ

なんたる夢のやうな群集だらう

そこでは文明のふしぎなる幻燈機械や

天體旅行の奇妙なる見世物をのぞく步く

さうして西曆千八百十年頃の 佛國巴里市を見せるパノラマ館の裏口から

ひとの知らない祕密の拔裏「時」の胎内へもぐり込んだ

ああ この消亡をだれが知るか!

圓頂塔(どうむ)の上に圓頂塔(どうむ)が重なり

無限にはるかなる地平の空で

日ざしは悲しげにただよつて居る。

 

   *

因みに、私の所持する筑摩版全集初版にはミスがあるのを発見した。「校異」を見ると、校訂本文は、「ああ この消亡をだれが知るか!」の「消亡」を消毒して「逃亡」としている旨の記載があるのだが、幸いなるかな!!! 校訂本文は「消亡」のままで、強制消毒をし忘れているのである。]

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